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「キャリア軸」の見つけ方
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「キャリア軸」の見つけ方 ~5年後の自分が不安なあなたへ~

将来が漠然と不安…そんな社会人1〜3年目が「キャリアの軸」を見つけるための自己棚卸しワーク・判断基準・考え方を解説します。

思考法著者: 人事部 A.M

5年後の自分が不安なあなたへ:キャリア軸の見つけ方

「このままでいいのかな…」と、ふと立ち止まってしまう瞬間はありませんか?入社から3年が経ち、仕事にも慣れてきた頃、多くの若手ビジネスパーソンが経験する“分岐点”です。

  • 毎日同じ業務の繰り返しで、この先に何があるのか見えない
  • 周囲の同期が昇進や転職で活躍している話を聞いて、自分だけが取り残されているように感じる
  • 「やりたいこと」や「向いていること」が分からず、将来が見えずに焦る

このような漠然とした不安を抱くのは、決してあなただけではありません。多くの人が、この時期に同じような悩みを抱えています。そして、その不安の正体は、実は「軸がない」ことよりも、 「軸を言語化できていない」 ことにある場合がほとんどです。

焦って転職活動に踏み出す前に、まずは一度立ち止まって、自分自身とじっくり向き合ってみませんか?

この記事では、あなたの心の中にある漠然とした不安の正体を言語化し、自分らしいキャリアを描くための「キャリア軸」を見つけるための3つの視点と、明日から始められる具体的なアクションをご紹介します。

この記事の重要ポイント

  • 「やりたいこと」よりも「やれること」 から逆算する視点が重要
  • キャリアの“軸”は、最初から見つかるものではなく、これまでの経験から “気づくもの”
  • 「興味」「得意」「評価される」 の重なるポイントが、あなたらしいキャリアの起点になる
  • 漠然とした不安を “見える化” し、自己理解を深めるワークで軸を整理できる
  • モヤモヤしたまま働くより、一度立ち止まって 「自分会議」 を開くことが未来を切り開く

こんな人におすすめ

  • 周囲と比べてしまい、自分のキャリアに焦りを感じている
  • 「キャリアプランを立てて」と言われても、何から考えていいかわからない
  • 転職も視野に入ってきたが、決断するための“軸”が見つからない
  • 自分の強みや価値観がわからず、面接などでうまく言語化できない
  • 自分の「仕事観」が曖昧なままで、将来が不安で仕方ない

なぜ若手は“キャリアの不安”を感じやすいのか?

社会人1〜3年目という時期は、仕事が分かってきたからこそ、かえって不安を感じやすくなります。この時期に多くの人が抱く不安の背景には、主に3つの要因が考えられます。

1. ロールモデルの不足とキャリアパスの不透明感

入社したばかりの頃は、先輩や上司の指示に従い、目の前の業務をこなすことで精一杯です。しかし、仕事に慣れてくると「この会社で、この仕事で、5年後、10年後どうなるのだろう?」と自分の将来を具体的に考えるようになります。その時、身近に「この人のようになりたい」と思えるロールモデルがいないと、自分の未来像が見えず、不安に陥りやすくなります。

また、新卒で“なんとなく”配属された部署で働いている場合、仕事内容と自分の興味や適性が一致しているか分からず、モヤモヤした気持ちを抱えがちです。社内でどのようなスキルを身につければ、どのようなキャリアが描けるのか、明確なキャリアパスが見えないことも、不安を募らせる大きな原因となります。

2. SNSや転職情報との比較による自己肯定感の低下

SNSや転職情報サイトを開けば、キラキラと輝く「選ばれる人」ばかりが目に飛び込んできます。

  • 「20代でマネージャーに昇進!」
  • 「未経験からWebマーケターに転職し、年収が1.5倍に!」
  • 「フリーランスとして独立し、世界中を旅しながら仕事!」

このような成功事例を目にするたびに、「自分は何も成し遂げていない…」と感じ、自己肯定感が下がってしまいます。しかし、SNSで発信される情報は、多くの場合、成功の一部分を切り取ったものに過ぎません。他人の輝かしい一面と比較して焦る必要はありません。大切なのは、他人ではなく、過去の自分と向き合い、着実に成長しているかを確認することです。

3. 「このままでいいのか」という根本的な問い

仕事がスムーズにこなせるようになったからこそ、「この仕事は、本当に自分がやりたかったことなのだろうか?」という根本的な問いが湧いてきます。目の前の業務をこなすだけでなく、「この仕事を通じて、自分は何を成し遂げたいのだろうか?」と自問自答する時期なのです。

この不安は、決してネガティブな感情ではありません。むしろ、キャリアを真剣に考えるようになったからこそ湧いてくる、健全なサインだと言えます。このサインを見過ごさず、自分と向き合うことが、未来をより良い方向に導く第一歩なのです。


キャリア軸を見つけるための3ステップ

「キャリア軸」と聞くと、「一生変わらないもの」や「壮大な目標」のように感じてしまうかもしれません。しかし、キャリア軸は「やりたいこと」からいきなり見つかるものではなく、これまでの経験を棚卸しすることで “気づくもの” です。

ここでは、あなたのキャリアの “仮軸” を見つけるための、具体的な3つのステップとワークをご紹介します。

ステップ①:「興味」「得意」「評価された経験」を棚卸しする

まずは、あなたの過去の経験を振り返り、以下の3つの要素を書き出してみましょう。これが「自分会議」の第一歩です。

  • 興味(Will): 「仕事でこれをやっている時、楽しかった」「時間を忘れて没頭した」など、あなたの心が動いた経験。
  • 得意(Can): 「人よりも上手にできる」「自然と周りから頼られた」など、あなたの能力が発揮された経験。
  • 評価された経験(Must): 「褒められた」「大きな仕事を任された」など、他人から認められた経験。

この3つの重なる部分が、あなたのキャリアの起点になります。

ワークの進め方

紙やノート、またはPCのメモ帳でも構いません。以下の質問に、深く考えすぎず、直感的に書き出してみてください。

  1. 学生時代や前職での経験
    • 学業やサークル、アルバイトで 「楽しかったこと」「時間を忘れて取り組んだこと」 は何ですか?
    • 周りの人から 「すごいね」「助かったよ」 と言われたのは、どんな時ですか?
    • 「人よりも上手にできた」「スムーズにできた」 と感じたのは、どんな作業や役割でしたか?
  2. 現職での経験
    • 日々の業務の中で 「面白い」「ワクワクする」 と感じた瞬間はありますか?
    • 上司や顧客から 「ありがとう」「君のおかげだ」 と感謝された経験は?
    • 仕事の中で、 「気づいたら自分だけがやっていた」「自然と頼られていた」 業務はありますか?

ステップ②:価値観・ライフスタイルを言語化する

キャリアは、仕事だけで決まるものではありません。あなたの「どんな生き方をしたいか」という価値観やライフスタイルと密接に関わっています。仕事は、あなたの人生をより豊かにするための手段であり、目的ではありません。

ワークの進め方

以下の質問に答えることで、あなたの「仕事観」を言語化しましょう。

  • どんな働き方をしたい?
    • 安定性重視: 成果よりも安定した給与や雇用形態を求める。将来的な安心感を大切にしたい。
    • 成長性重視: スキルアップや挑戦できる環境を求める。常に新しいことに学び、挑戦し続けたい。
    • 自由度重視: 働く時間や場所に縛られず、自分の裁量で働きたい。ワークライフバランスを重視したい。
    • 社会貢献重視: 仕事を通じて社会をより良くすることに貢献したい。誰かの役に立つ実感を大切にしたい。
  • どんな人と仕事したい?
    • チームで協力し、和気あいあいと働きたい
    • プロフェッショナルなスキルを持った人たちと切磋琢磨したい
    • 尊敬できるリーダーの下で、リーダーシップを学びたい
    • 互いに高め合える、フラットな関係性の仲間と働きたい
  • どんな環境を避けたい?
    • 残業が常態化している環境
    • 評価基準が曖昧で、頑張りが正当に評価されない環境
    • 意見が言いにくい、風通しの悪い環境
    • 新しいことに挑戦することを阻害される環境

これらの問いに答えることで、あなたの「仕事観」が言語化され、具体的なキャリアの判断軸が見えてきます。キャリアは「スキル」だけでなく「生活設計」とのバランスも大事なのです。


ステップ③:3年後の自分を想像して逆算する

「キャリア軸」は、未来の自分から逆算することで見えてきます。3年後の自分が、どんなスキルを持ち、どんな働き方をしているか、具体的に想像してみましょう。

ワークの進め方

未来の自分を具体的にイメージし、そこから 「今やるべきこと」 を導き出します。

    • 「3年後には、チームのリーダーとしてメンバーを引っ張っている」
    • 「3年後には、Webマーケティングの専門家として、副業でも収入を得ている」
    • 「3年後には、今の会社で新規事業の立ち上げに携わっている」

この「未来の自分」を想像することで、 「今やるべきこと」 が明確になります。

  • 「チームのリーダーになりたいなら、日々の業務で積極的にメンバーをサポートしたり、後輩の育成に力を入れたりしよう」
  • 「Webマーケティングの専門家になりたいなら、業務時間外で独学を始めたり、社内で関連業務がないか探してみよう」
  • 「新規事業に携わりたいなら、業務改善の提案をしたり、社内公募制度に応募したりしてみよう」

また、未来の自分から逆算することで、 「今やらなくてもいいこと」 も整理できます。

  • 「リーダーを目指すなら、今の業務範囲外のプロジェクトに手を挙げる方が、飲み会に参加するよりも優先度が高い」

このように、漠然とした不安を「具体的なアクション」に変えることで、あなたのキャリアは確実に前へと進んでいきます。


キャリア軸の見つけ方でよくある誤解と落とし穴

キャリア軸を見つける旅には、誰もが陥りがちな、いくつかの誤解や落とし穴があります。

1. 「一生の軸を今決めなきゃ」はプレッシャーになる

キャリアの軸は、一度決めたら一生変えられないものではありません。テクノロジーや社会の変化が激しい現代において、一つの軸に固執することは、かえって視野を狭めることにもなり得ます。

軸は、あくまで「今の自分にとっての指針」です。環境や自分の成長、ライフステージの変化に合わせて、柔軟にアップデートしていくものだと考えましょう。

2. 軸=職種名や業界名と勘違いしている

「私の軸は営業です」「IT業界で働きたいです」のように、軸を職種名や業界名で定義していませんか?

本当に重要なのは、「なぜ営業なのか?」「IT業界で何をしたいのか?」という、その奥にある “価値観×強み” です。

  • NGな軸: 「営業」
  • OKな軸: 「誰かの課題解決に貢献し、感謝されることにやりがいを感じる」

3. 「好きなことを仕事にすべき」は必ずしも正しくない

「好きなこと」を仕事にするのは理想ですが、それだけではうまくいかないこともあります。

仕事には、好きなことだけでなく、地道な作業や苦労もつきものです。情熱だけでは乗り越えられない壁にぶつかることもあります。

そこで重要なのが、ステップ①で紹介した「得意なこと」や「評価された経験」です。 「得意なこと」 は、努力しなくても成果が出やすいので、仕事のモチベーションを保つ上で大きな武器になります。

軸は、「好きなこと」と「得意なこと」のバランスから見つけるのが現実的です。

4. 軸は“やりながら”見つけるもの

頭の中で完璧な軸を見つけようとしても、なかなか見つかるものではありません。

「棚卸し→仮説→試行」のサイクルを回すことが重要です。

  1. 棚卸し: これまでの経験から、あなたの「得意」や「興味」を洗い出す
  2. 仮説: 「もしかしたら、自分は〇〇にやりがいを感じるかも?」と仮の軸を立てる
  3. 試行: その仮説を検証するために、小さな一歩を踏み出す(社内の別部署の仕事を手伝う、副業を始めてみる、関連する資格の勉強をするなど)

この試行錯誤を繰り返すことで、あなたの軸は少しずつ磨かれていきます。


Q&Aで不安を整理しよう

Q1. 「キャリア軸が見つからないまま働き続けて大丈夫?」

軸は“仮でOK”です。完璧な軸が見つからないと不安に感じるかもしれませんが、無理に探す必要はありません。

大切なのは、「今の自分は、仕事を通じて何を求めているのか?」という問いを常に持ち続けることです。この問いが、あなたの行動や選択の判断軸となり、漠然とした不安に飲み込まれるのを防いでくれます。

Q2. 「何が向いているのか分からない…」

他人からの評価に耳を傾けましょう。「向いていること」は、自分では当たり前すぎて気づけないことが多々あります。

  • 「君の作った資料はいつも分かりやすいね」
  • 「いつも相談に乗ってくれてありがとう」
  • 「〇〇の仕事、任せてよかった」

このように、他人からの評価や「自然と頼られたこと」をヒントに、自分の得意を見つけてみましょう。

Q3. 「やりたいことが見つからない」

「誰のどんな悩みを解決したいか」から考えてみましょう。「やりたいこと」がなくても、仕事は始められます。

  • 「なぜ今の仕事をしているのか?」
  • 「この仕事を通じて、誰がどんな風に喜んでくれるか?」

この問いを突き詰めることで、「顧客の課題解決をサポートすることに喜びを感じる」「チームメンバーが働きやすい環境を作りたい」といった、仕事との接点が見えてきます。


まとめ:あなたのキャリアは「自分会議」から始まる

不安の正体は「軸がない」ことより、 「言語化できていない」 ことです。

まずは、一度立ち止まって、自分だけの「自分会議」を開いてみましょう。

  • 「興味×得意×評価」の重なるところを掘り下げてみよう
  • 一生変わらない“絶対の軸”を探すのではなく、今の自分に合う “仮軸” を置くことが重要
  • 迷ったら「3年後に何ができる人になっていたいか?」で逆算してみよう

今のモヤモヤは、あなたが自分のキャリアを真剣に考えるようになった、成長の証です。この機会に自分と向き合い、納得感を持って働くための第一歩を踏み出してみませんか。