言われたことだけこなしていませんか?
「リーダーシップ」は組織運営において欠かせない資質だと、誰もが知っています。では、そのリーダーを支える 「フォロワーシップ」 についてはどうでしょうか?
組織における成果やチームの雰囲気、プロジェクトの進行において、リーダーだけでなくフォロワーの力が非常に大きな影響を持つにもかかわらず、「フォロワーとしてどう行動すべきか」「自分の役割をどう果たせばよいのか」といった問いに明確な答えを持てていない方は少なくありません。
たとえば、上司をうまくサポートしたいけれど、具体的にどう動けばいいか分からない。組織にもっと貢献したいと思いながらも、受け身の姿勢から抜け出せない。そんなもどかしさを抱えたまま働いていると、成長の実感も持てず、チームの一員としての存在意義も見失いがちです。しかし、フォロワーシップは**“リーダーに従う姿勢”ではなく、“チーム全体に貢献する能動的な姿勢”**であり、ビジネスパーソンとしての力を高めるために欠かせないスキルです。
この記事で学べること
- フォロワーシップとは何か?
- なぜ今フォロワーシップが注目されているのか?
- チームやリーダーにどんな価値をもたらすのか?
- フォロワーに求められるスキルと具体的なアクション
こんな人におすすめ!
- 上司やリーダーをもっとサポートしたいけど、どう動けばいいか分からない人
- 言われたことはこなしているが、もっと主体的にチームに貢献したいと感じている人
- 受け身の姿勢から脱却したい若手社員や中堅メンバー
- チームの雰囲気や成果を、自分の力でもっと良くしていきたい人
1.フォロワーシップとは?
1-1. フォロワーは「指示待ち人間」ではない
「フォロワー」と聞くと、受け身で言われたことだけをこなす「指示待ち人間」をイメージする人もいるかもしれません。しかし、本来のフォロワーとは、リーダーの補佐役として行動するだけでなく、自分の意見を持ち、状況に応じて 主体的に判断・行動する存在 です。
組織にはさまざまな役割がありますが、リーダーだけが全てを背負っていては、スピードや柔軟性が損なわれてしまいます。そんなとき、リーダーを支えつつ、自らも判断し行動できるフォロワーの存在が、組織の推進力を支えることになるのです。
実際、優れたリーダーほど、優れたフォロワーに恵まれています。フォロワーが自律的に動き、状況を読み取り、必要に応じてリーダーに進言する――そうした信頼関係と役割分担が、チームの力を最大限に引き出します。
指示を待つのではなく、「いま、何が求められているのか」を読み取り、自ら行動を起こすこと。そこに、現代のフォロワーの真価があるのです。
1-2. 今、なぜフォロワーシップが注目されているのか
フォロワーシップは今、リーダーシップと並んで重要視されています。その背景には、ビジネス環境の大きな変化があります。
従来のように「トップダウンで指示を出すリーダー」と「それに従うフォロワー」という構図では、変化のスピードに対応しきれない場面が増えています。市場のニーズが流動的になり、社内外の多様なステークホルダーとの関係性も複雑化している今、上からの指示を待つだけでは機会を逃してしまうのです。
また、働き方改革やリモートワークの拡大により、「その場にいれば状況が分かる」という時代ではなくなりました。状況判断や行動の責任が、より個々のメンバーに委ねられるようになってきています。
こうした背景の中で、チームの一人ひとりが能動的に動き、リーダーを支え合う関係性が求められるようになっています。フォロワーシップは、まさにこうした時代にフィットする「これからの働き方」の基盤なのです。
1-3. リーダーシップとの違いと相互関係
フォロワーシップとリーダーシップは、対立する概念ではなく、 補完し合う関係 にあります。
リーダーシップは方向性や目標を示し、メンバーを導く力です。一方、フォロワーシップは、リーダーの意思やビジョンを理解し、実現のために主体的に行動し、時には意見を述べ、支える力です。
良いリーダーがいても、フォロワーが受け身では、組織は前に進みません。また、優れたフォロワーがいても、方向性を定められないリーダーの下では、努力が空回りします。
つまり、リーダーシップとフォロワーシップは「上司と部下」の上下関係ではなく、目標に向かって協働する**“パートナー”**のような関係です。お互いの役割が明確になり、信頼関係が築かれれば、チームはより柔軟で強くなります。
1-4. 5つのフォロワータイプ
フォロワーにも、さまざまなタイプがあります。アメリカの心理学者ロバート・ケリーは、フォロワーを以下の5タイプに分類しました。

模範的フォロワー
もっとも理想的なフォロワータイプです。リーダーに対してただ従うのではなく、自らの視点を持ち、建設的な提言やフィードバックを行いながら、組織の目的達成に主体的に貢献します。組織への忠誠心と批判的思考のバランスを持ち合わせており、**「影響力のあるフォロワー」**としてリーダーの信頼も厚い存在です。
順応型フォロワー
リーダーの方針や指示に忠実に従うタイプです。一見すると扱いやすく、チームプレイヤーのようにも見えますが、自発性や提案力に乏しく、「指示待ち人間」や「イエスマン」と呼ばれることもあります。変化の激しい現代の組織環境では、受け身の姿勢が課題となりやすいタイプです。
孤立型フォロワー
知識や経験があり、現状への疑問や批判的視点を持つ一方で、組織への貢献意欲が乏しいタイプです。自らの手を動かすことなく、リーダーや組織の方針に対して評論家的な立場を取る傾向があります。正しい指摘があったとしても、行動を伴わないため、結果的に孤立しやすく、信頼や影響力を得にくいのが特徴です。
消極型フォロワー
自分の意見を持たず、組織への貢献意欲も極めて低いタイプです。ただ在籍しているだけで、主体的に考えたり動いたりすることがほとんどなく、組織内での存在感や影響力も非常に希薄です。
実務型フォロワー
与えられた業務範囲はきっちりこなすものの、それ以上の関わりを避けるタイプです。組織への貢献度は一定ありますが、全体最適やチームの成功よりも、自分の業務遂行を重視する傾向があり、受動的になりやすい傾向があります。状況によっては柔軟に対応できる一方で、組織の推進力にはなりにくい面もあります。
このように、フォロワーには多様なタイプが存在し、自身がどの傾向にあるかを知ることが、フォロワーシップを高めていく第一歩になります。同時に、チームや組織全体の中で、どのタイプのフォロワーが多いかを見極めることも、マネジメントやチームづくりにおいて重要です。
2.フォロワーが組織にもたらす価値
フォロワーシップは、単なる**「上司への従属」**ではありません。組織やチームにおいてフォロワーが果たす役割は非常に大きく、組織の活性化や成果の最大化に欠かせない存在です。この章では、フォロワーが組織にもたらす具体的な価値について、3つの視点から整理していきます。
2-1. リーダーの負担軽減と意思決定の質向上
リーダーは、多くのタスク・プレッシャー・判断を日々抱えています。そんな中で、信頼できるフォロワーの存在は 「判断の質」と「スピード」を大きく左右 します。
たとえば、フォロワーが状況を先回りして情報を整理したり、建設的な意見を出してくれることで、リーダーはより冷静かつ客観的な判断がしやすくなります。また、フォロワーがチーム内の温度感や意見を集めて伝える役割を果たすことで、上司が見落としがちな現場の声を可視化できるのも大きなメリットです。
フォロワーが「受け手」ではなく**「協力者」**として機能することで、リーダーの負担は軽くなり、組織の意思決定の精度も高まっていきます。
2-2. チームの自律性と変化対応力の強化
自律的に動けるフォロワーが多いチームは、リーダーに依存しすぎず、メンバー同士で支え合い・動き合うカルチャーが育ちます。
現代のビジネス環境では、リーダーひとりがすべてをマネジメントするのは非現実的です。むしろ、フォロワー一人ひとりが「自分の役割と価値」を理解し、周囲を見ながら動けるチームこそが、変化に強く、柔軟に成果を出せるチームです。
また、フォロワーの発言力がある環境は、「意見を出しても無駄」「どうせ決まっている」というあきらめムードを払拭し、 心理的安全性の高い組織文化 へとつながります。
2-3. 組織全体の信頼と風通しをつくる存在
フォロワーは、 「リーダーと現場の橋渡し役」 として、組織内コミュニケーションの潤滑油のような役割も担っています。
たとえば、上司の方針をチームメンバーにうまく伝えたり、逆にチームの課題を上司に伝えるといった動きは、リーダーに代わって信頼関係を築く重要な行動です。こうしたフォロワーの働きがあることで、組織内の情報の流れがスムーズになり、風通しの良い環境が生まれます。結果として、上司・部下・同僚の間に良好な関係性が育ち、チームの結束力やモチベーションにもつながるのです。
3.フォロワーに求められる5つの力
リーダーを支え、チームを前進させるフォロワーには、「ただ言われたことをこなす人」以上の力が求められます。ただ言われたことをやるだけでなく、チームや上司にとって 「この人がいて助かる」 と思える存在になるには、具体的にどんな力が必要なのでしょうか?ここでは、仕事で信頼されるフォロワーに共通する5つのスキルについてご紹介します。
3-1. 主体性
主体性は、リーダーからの指示をただ待つのではなく、自ら考え行動する力です。変化の激しいビジネス環境では、指示待ちの態度では迅速な対応ができず、チーム全体の足を引っ張る原因になります。主体性を持つことで、チームのスピード感や柔軟性を高められます。
具体的な行動例:
- 上司からの指示を待つのではなく、自分のタスクの優先順位を自ら決めて取り組む。
- 業務の進め方で疑問があれば自ら質問や提案をする。
- チームの目標達成のために、自分から新しいアイデアや改善策を考える。
3-2. 自己管理能力
自己管理能力は、自分の感情や行動、時間をコントロールし、安定して成果を出し続けるために不可欠です。特にリーダーを支えるフォロワーには、自立して役割を果たすことが期待されるため、この力が欠かせません。
具体的な行動例:
- 期限や目標を意識し、タスクを計画的にこなす。
- 仕事でのストレスを自覚し、適切なタイミングでリフレッシュを図る。
- 自分の感情に流されず、冷静に状況判断を行う。
3-3. 協働力
協働力は、多様なメンバーと円滑に連携し、チームとしてのパフォーマンスを最大化するために必要です。リーダーをサポートし、チームの調和を保つ上で重要な役割を果たします。
具体的な行動例:
- チーム内での役割分担を理解し、自分の責任を果たす。
- 意見が違っても冷静に話し合い、相手の立場を尊重する。
- 必要な情報を積極的に共有し、チームの連携を高める。
3-4. チーム視点での貢献力
個人の成果だけでなく、チーム全体の成功を考える視点があると、組織の目標達成がスムーズになります。フォロワーがチームのために動くことで、リーダーの負担軽減にもつながります。
具体的な行動例:
- 自分の担当以外の問題にも目を向け、助けが必要な時にサポートを申し出る。
- チームの目標や課題を理解し、それに沿った行動を心がける。
- 個人の成果をチームの成功に結びつける意識を持つ。
3-5. 建設的な意見発信
フォロワーがただリーダーの意見に従うだけでなく、組織の改善や成長のために意見を出すことは不可欠です。建設的な意見はチームの活性化につながり、問題の早期発見や解決を促進します。
具体的な行動例:
- 問題点を指摘する際に、改善案や代替案を一緒に提案する。
- 会議でリーダーやメンバーの意見に対し、質問や意見を丁寧に伝える。
- 自分の考えを根拠を示して説明し、相手の理解を促す。
4.フォロワーシップを高める実践ヒント
これまで、フォロワーに求められる5つの力について解説してきました。どの力も、組織やチームで主体的に動き、リーダーを支え、変化に柔軟に対応するために不可欠です。しかし、頭で理解するだけでは、なかなか日々の行動にはつながりません。
そこでこの章では、フォロワーシップを実際に高めるために意識したいポイントや習慣、すぐに取り入れられる具体的なアクションを紹介します。上司やチームとの関係性を見直すことから始め、「任される人」になるための心構えや行動習慣、そして明日から実践できる3つのアクションまで、段階的に取り組める内容です。
4-1. 上司やチームとの関係性を見直す
フォロワーシップを高めるための第一歩は、日々のコミュニケーションや関係性を見直すことです。上司やチームメンバーと良好な関係を築くことで、信頼が生まれ、意見や提案が受け入れられやすくなります。
具体的には、以下のポイントを意識してみましょう。
- 相手の考えや状況を理解しようとする姿勢 相手の立場や背景を想像し、気持ちに寄り添うことで共感が生まれます。
- 定期的なコミュニケーションを欠かさない 日常的な報告・相談をこまめに行い、情報のすれ違いや誤解を防ぎます。
- 感謝やねぎらいの言葉を伝える 小さなことでも「ありがとう」「助かりました」と伝えることで、関係性は深まります。
これらの行動が積み重なることで、信頼の基盤ができ、フォロワーシップ発揮の土台が整います。
4-2. 「任される人」になるための習慣
フォロワーシップを発揮し、チームから信頼されるためには 「任される人」 になることが重要です。任される人は、責任感を持って仕事に取り組み、期待以上の成果を出すことができる人です。
そのために意識したい習慣をいくつか紹介します。
- 約束したことは必ず守る 期限や内容を守ることで、信頼を積み重ねられます。
- 問題が起きたら早めに報告・相談する 自分一人で抱え込まず、解決に向けてチームと協力します。
- 改善点や効率化の提案を積極的に行う 受け身ではなく、自ら考え動く姿勢を見せましょう。
- 自己管理を徹底する スケジュール管理や健康管理を行い、安定したパフォーマンスを維持します。
こうした習慣はすぐに身につくものではありませんが、日々の小さな積み重ねが「任される人」としての評価を高めていきます。
4-3. 明日から始められる3つのアクション
最後に、フォロワーシップをすぐに高めたい方のために、明日から実践できる3つの具体的なアクションを紹介します。
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毎日の報連相を丁寧にする 忙しくても 「報告」「連絡」「相談」 は欠かさず、簡潔かつ正確に伝える習慣をつけましょう。情報共有がスムーズになることで、チームの動きが良くなります。
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上司やチームメンバーに小さな感謝を伝える 「ありがとう」や「助かりました」といった一言を日常的に伝えることで、良好な人間関係を築きやすくなります。
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自分の業務の目的や意義を毎日振り返る ただ作業をこなすのではなく、なぜそれが必要かを考えることで、主体的に取り組む意識が高まります。
これらは特別な準備も必要なく、誰でもすぐに取り入れられる行動です。継続することで、フォロワーシップが自然と身につき、信頼される存在へと成長していけるでしょう。
5.まとめ
フォロワーが育つ組織は、リーダーも育つ
これまでの記事では、フォロワーシップとは何か、なぜ今注目されているのか、そしてどのような価値をチームや組織にもたらすのかについて解説してきました。また、フォロワーに求められる5つの力と、その重要性や行動の具体例についても整理し、最後に実践に向けたヒントを紹介しました。
リーダーシップが 「方向を示す力」 だとすれば、フォロワーシップは 「ともに進む力」 です。組織が変化に柔軟に対応し、成果を出し続けるためには、一人ひとりが自律的に動き、チーム全体を支える存在である必要があります。
そして、良いフォロワーが育つことで、リーダーもまた育ちます。上司部下という関係にとらわれず、互いに信頼と対話を重ねていける関係性こそが、強い組織の土台です。フォロワーとしての一歩を踏み出すことは、リーダーを支えるだけでなく、あなた自身の成長にもつながります。明日からの一つひとつの行動が、より良いチーム、そしてより良い自分をつくるきっかけになるでしょう。