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「伝わる話し方」入門 ~「何が言いたいか分からない」を脱する3ステップ~

「伝わる話し方」入門 ~「何が言いたいか分からない」を脱する3ステップ~

上司や同僚から『結局何が言いたいの?』と言われがちな社会人1~3年目に向けて、“伝える力”を高めるためのシンプルな3ステップと習慣化メソッドを紹介します。

思考法著者: 人事部 A.M

誰しもが感じる伝えたい事が伝わらない苦難

「説明が長くて伝わらないと言われた」「報告しても、“結局どうすれば?”と聞き返される」「プレゼンや会議で自信が持てない…」

社会人として一歩を踏み出したばかりのあなたなら、一度はそんな風に感じたことがあるのではないでしょうか。上司や先輩との会話、顧客への提案、チーム内での情報共有など、ビジネスシーンでは「話す」機会が溢れています。しかし、どれだけ誠意をもって話しても、自分の意図が相手に伝わらず、もどかしい思いをしている若手ビジネスパーソンは少なくありません。まるで壁に話しているかのように、相手の反応が薄かったり、「で、何が言いたいの?」とストレートに聞かれてしまったり。このような経験があると、「自分は話すのが苦手だ」「コミュニケーション能力が低い」と、自信を失ってしまうこともあるでしょう。

しかし、安心してください。実は、「話が伝わらない」の原因は、あなたの話し方の技術や、コミュニケーション能力の欠如にあるわけではありません。多くの場合、原因は「話の構成の“型”を知らないこと」にあります。つまり、話す内容を頭の中でどのように組み立て、どのような順序で相手に提示すれば、最も効率的かつ効果的に伝わるのか、その基本的なフレームワークを習得していないだけなのです。

本記事では、「何が言いたいか分からない」という状態を卒業するための、「伝わる話し方」の3ステップを徹底解説します。これは、社会人1〜3年目にこそ身につけてほしい、ビジネスに効く“会話設計術”です。このシンプルな型を身につけるだけで、あなたの話は劇的に分かりやすくなり、自信を持ってビジネスシーンに臨めるようになるでしょう。

こんな人におススメ

  • 上司に報告しても「要点が見えない」「結局どうなった?」と言われた経験がある人
  • 頭の中で整理しきれないまま話し始めてしまい、途中で話がごちゃごちゃになってしまう人
  • プレゼンや会議で話すと、自分でも何を言いたいのか分からなくなる、あるいは緊張して言葉が出なくなる人
  • 営業や接客で、伝えたい商品の魅力やサービス内容がうまく相手に届かないと感じる人
  • 「話し方に自信がない、でも変わりたい」と強く願っている若手ビジネスパーソン

この記事の重要ポイント

  • 話が伝わらないのは、話し方自体ではなく“構成”ができていないから
  • 「結論→理由→具体」の3ステップで話すだけで、一気に分かりやすさが向上する
  • 話す前に「主語」「目的」「結論」を整理するだけで、話の精度と伝達効率が格段に上がる
  • ビジネスで評価される人ほど、簡潔で論理的な話し方が自然にできている
  • 「伝える力」は才能ではなく、誰でも鍛えられるスキル。苦手意識は必ず克服できる

「話が伝わらない」若手に共通する落とし穴

なぜ、あなたの話は「何が言いたいか分からない」と言われてしまうのでしょうか。伝わらない話し方には、いくつかの共通する落とし穴が存在します。これらは、話し方そのものの問題というよりも、話す前の「思考整理」が不十分であることに起因しています。

  1. 「話す内容を決めずにとりあえず話す」=思考がバラけて聞き手が混乱 最も多いのが、話す前に「何を伝えたいのか」「最も重要なメッセージは何か」を明確にしていないケースです。頭の中にある情報をそのまま羅列するように話してしまうと、聞き手はどこが本題で、何が結論なのかを理解することができません。話し手自身も話しながら思考がバラけてしまい、結局、何が言いたかったのか自分でも分からなくなるという悪循環に陥ります。結果として、話が散漫になり、聞き手は混乱し、最終的には「結局、何が言いたいの?」という疑問符が残ってしまうのです。

  2. 「背景や経緯から話しすぎる」=聞き手が“本題”を見失う 丁寧に説明しようとするあまり、話の本題に入る前に、膨大な背景情報や細かい経緯から話し始めてしまうパターンです。例えば、上司に業務の進捗を報告する際、「先週の月曜日にA社から問い合わせがありまして、その時はBさんが対応したんですが…」といった具合に、結論から遠いところから話し始めると、聞き手は「で、今何が起こっているの?」「結論は何?」と、次第に苛立ちを感じ始めます。特に多忙なビジネスパーソンは、結論や要点をいち早く知りたがっています。回りくどい説明は、聞き手の貴重な時間を奪うだけでなく、彼らの集中力を散漫にさせてしまうのです。

  3. 「語尾が曖昧」「断言できない」=自信がない印象を与えてしまう 「~だと思います」「~かもしれません」「~のような気がします」といった曖昧な語尾を多用したり、自分の意見や提案をはっきりと断言できなかったりする話し方も、聞き手に不信感や不安感を与えてしまいます。特に、若手社員は経験が浅いことから、つい控えめな表現を選びがちですが、これでは「この人は本当に理解しているのか」「責任を取る気があるのか」という印象を与えかねません。ビジネスにおける会話は、情報共有だけでなく、相手に「判断」を促したり、「行動」を促したりする目的があります。曖昧な表現では、相手は安心して判断や行動に移ることができません。

これらの落とし穴は、どれも話し方の表面的なテクニックの問題ではなく、話す前の「組み立て方=思考整理」の問題であると言えます。

“うまく話す”より、“正しく構成する”方が、話は伝わります。


「伝わる話し方」をつくる3ステップ

それでは、具体的にどのようにすれば「伝わる話し方」ができるようになるのでしょうか。その鍵となるのが、以下の3つのシンプルなステップです。これは、ビジネスのあらゆるコミュニケーションに適用できる普遍的な「型」であり、特にPREP法(Point→Reason→Example→Point)のエッセンスを取り入れたものです。

ステップ①:結論を最初に言う(PREPのP:Point)

これが、話が伝わるようになるための最も重要かつ効果的なステップです。まず、あなたが「何が言いたいか」を最初に1行で提示します。話の冒頭で結論を明確にすることで、聞き手は「これから何の話が始まるのか」を瞬時に理解し、その後の話の内容をスムーズに受け入れる準備ができます。

  • 具体的な例:
    • 「結論から申し上げますと、新規プロジェクトはA案を採用すべきです。」
    • 「ご報告いたします。〇〇の件、無事に完了いたしました。」
    • 「本日は、△△に関する課題解決策についてご提案させていただきます。」
    • 「お問い合わせいただいた件についてですが、現在調査中です。」

このように最初に結論を提示することで、聞き手は話の全体像を把握し、続く説明が何のためのものなのかを理解しながら聞くことができます。もし、時間がない場合でも、結論だけでも伝えることができるため、非常に効率的です。

ステップ②:理由を2〜3つ、論理的に述べる(PREPのR:ReasonとE:Example)

結論を提示したら、次に「なぜそう思うのか」「その結論に至った根拠は何か」を、2〜3つ程度に絞ってシンプルに説明します。理由は多すぎると覚えにくく、少なすぎると説得力に欠けるため、2〜3つが最適です。それぞれの理由は、論理的に繋がり、結論を裏付けるものである必要があります。

  • 具体的な例(ステップ①の結論に続く):
    • 「A案を採用すべき理由は2つあります。1つ目は、コストを20%削減できる見込みがあるからです。2つ目は、競合他社が既に同様の施策で成功しているため、リスクが低いと判断したからです。」
    • 「完了した理由は、〇〇のシステムを改良し、手作業での確認を自動化したためです。これにより、作業時間が大幅に短縮されました。」
    • 「今回の課題解決策は、お客様のニーズに最も合致しており、かつ短期間で導入可能だからです。」

この段階で大切なのは、「なぜ」を明確にすることです。結論の正当性や妥当性を、具体的な根拠をもって裏付けることで、聞き手の理解と納得を引き出す土台を築きます。

ステップ③:具体例や数字を添えて“納得”を引き出す(PREPのE:Example)

理由を述べた後、その理由を補強する具体的な事実、データ、エピソード、あるいは数字を添えることで、話の「リアリティ」と「説得力」を格段に高めます。人は抽象的な話よりも、具体的なイメージが湧く話の方が理解しやすく、記憶にも残りやすいものです。

  • 具体的な例(ステップ②の理由に続く):
    • 「たとえば、前回のプロジェクトでもA案と同様のアプローチを採用したことで、当初の予算を15%下回る形で目標達成ができました。また、競合のB社も〇〇のシステムを導入後、顧客満足度が10%向上したというデータがあります。」
    • 「具体的には、これまでの手作業では1件あたり10分かかっていた確認作業が、システム導入後は1分に短縮され、1日あたり〇〇時間の削減に繋がっています。」
    • 「実際に、弊社の他部署でも同様の課題を抱えていましたが、この解決策を導入した結果、生産性が30%向上し、残業時間が半減したという実績もございます。」

このように、具体的な事例や客観的な数字を示すことで、聞き手はあなたの話をより深く理解し、感情的にも論理的にも「なるほど」と納得できるようになります。説得力のある話は、この具体例や数字によって生み出されると言っても過言ではありません。

PREP法(Point→Reason→Example→Point)を使えば、誰でも論理的に話せます。


伝わる人が必ずやっている“思考整理”の習慣

「伝わる話し方」は、話す前の「思考整理」によって作られます。ビジネスで高い評価を得ている人ほど、話す内容を頭の中で、あるいは簡単なメモを使って、事前にしっかりと整理する習慣を持っています。彼らが実践している思考整理の習慣を見ていきましょう。

  1. 話す前に、メモや頭の中で「主語(誰が)」「目的(何をしたい)」「結論(どうする)」を整理している 話す内容が複雑であればあるほど、この3つの要素を明確にすることが重要です。

    • 主語(Who): 誰が話すのか、誰が行動するのか、誰が影響を受けるのか。主体を明確にします。
    • 目的(Why): この話を通じて、何を達成したいのか。相手にどうなってほしいのか(理解してほしい、承認してほしい、行動してほしいなど)。話す前に目的を明確にすることで、話の方向性がブレることを防ぎます。
    • 結論(Point): 最も伝えたいことは何か。この話の「肝」は何なのか。1行で言い表せるように言語化します。

    これらを整理するだけで、話の軸が定まり、無駄な情報が削ぎ落とされます。

  2. 5W1Hを意識して組み立てる:Who / What / Why / How / When / Where 話す内容の要素を網羅的に整理するために、5W1Hのフレームワークは非常に有効です。

    • Who(誰が): 誰が関わっているのか、誰に話すのか。
    • What(何を): 何を伝えたいのか、何が起こったのか、何をするのか。
    • Why(なぜ): なぜそうなのか、なぜそれが必要なのか、その理由や根拠。
    • How(どのように): どのように行うのか、具体的な方法や手順。
    • When(いつ): いつ行うのか、いつまでなのか、時間軸。
    • Where(どこで): どこで行うのか、場所。

    特に報告や連絡、相談の際には、これらの要素が抜け漏れなく整理されていると、相手は必要な情報を素早く理解し、適切な判断を下すことができます。

  3. 上司やお客様が「判断しやすい」話し方を意識している ビジネスにおけるコミュニケーションは、相手に「行動」を促すためのものです。上司であれば承認や指示、お客様であれば購入や契約といった判断を求めています。そのため、話す側は、相手がスムーズに判断できるように情報を整理し、提示することを意識します。

    具体的には、「目的 → 結論 → 根拠 → 次のアクション」の順で話すとビジネスでは特に伝わりやすいです。

    • 目的: 「今回の会議の目的は、〇〇の承認を得ることです。」
    • 結論: 「つきましては、A案の実施をお願いしたいと考えております。」
    • 根拠: 「その理由は…(PREP法と同様)」
    • 次のアクション: 「つきましては、来週中に〇〇の準備を進めてもよろしいでしょうか。」

    このように、最後に「次のアクション」を明確に提示することで、相手は次に何をすれば良いのか迷うことなく、スムーズに意思決定や行動に移ることができます。

“伝える力”は、“思考を整理する力”に他なりません。話す前に「自分が何を伝えたいか?」を1行で書けるかどうか。この訓練が、「伝わる話し方」を身につけるための鍵となります。簡潔にまとめられた結論は、その後の話の全てを支える羅針盤となるのです。


よくある壁とその乗り越え方(Q&A)

「伝わる話し方」を実践しようとしても、なかなかうまくいかない、という壁にぶつかることもあるでしょう。ここでは、若手ビジネスパーソンがよく抱える悩みと、その具体的な解決策をご紹介します。

Q1:話してる途中で、自分でも分からなくなってしまいます…

これは、話す前に頭の中が整理しきれていない証拠です。多くの情報を一度に伝えようとすると、情報が錯綜し、結果として自分自身も混乱してしまいます。

A. 話す前に「結論」だけメモに書いてから話すようにしましょう。1行でも構いません。

どんなに短い話でも、必ず冒頭で「何が言いたいのか」を明確にすることから始めてください。プレゼン資料の最初に「本日の結論」のスライドを入れるように、話す内容の最初に「私が伝えたいのはこれです」という1行を準備するのです。この1行を頭に入れて話すことで、話が脱線しそうになっても、すぐに軌道修正できるようになります。最初は短くても良いので、とにかく「結論ファースト」を徹底する練習をしてみましょう。

Q2:相手の反応が薄くて不安になります。

相手が話を聞いてくれているのか、理解してくれているのか分からず、不安になるのはよくあることです。特にリモート会議など、相手の表情が見えにくい状況では、さらに不安が増すかもしれません。

A. 相手の理解度を確認するために、「ここまででご不明点ありますか?」とこまめに確認しましょう。

一方的に話し続けるのではなく、適度なタイミングで「いかがでしょうか?」「ここまでで、何かご質問はございますか?」「ご認識の相違はございませんか?」などと、相手に問いかけ、反応を促す癖をつけましょう。これにより、相手は「自分の理解を伝える番だ」と意識し、不明点を質問しやすくなります。また、話し手は相手の反応を見ながら、説明のペースや内容を調整できるため、より確実に情報を伝えることができます。

Q3:そもそも言いたいことをうまくまとめられません。

話す以前の段階で、頭の中の情報を整理し、要点を抽出すること自体が難しいと感じる人もいるでしょう。これは、日頃から「要約する」というトレーニングが不足していることが原因かもしれません。

A. スライド1枚/メモ1枚で「要点だけ書き出す」練習を続けると、自然に整理できるようになります。

まずは、A4の紙1枚、あるいはプレゼンテーションのスライド1枚に、伝えたい内容の「要点」だけを書き出す練習をしてみてください。箇条書きでも、マインドマップでも構いません。重要なのは、情報を凝縮し、「これだけは伝えたい」というポイントを明確にすることです。 最初はなかなか難しいかもしれませんが、この練習を繰り返すうちに、自然と情報の優先順位がつけられるようになり、論理的に考える力が養われます。例えば、読んだ本の感想を1枚にまとめる、会議の議事録を簡潔に要約するといった日常的なトレーニングも効果的です。この「情報圧縮」のスキルが、伝わる話し方の土台となります。


まとめ

今回の記事では、「伝わる話し方」を身につけるための本質と、具体的なステップ、そしてよくある課題とその克服方法について解説しました。

改めて、この記事の重要ポイントを振り返りましょう。

  • 話が伝わらないのは、「話し方」ではなく「構成の欠如」が原因でした。 どれだけ流暢に話せても、話の組み立て方ができていなければ、相手はあなたの真意を掴むことができません。
  • 「結論→理由→具体」の3ステップで話すだけで、聞き手の理解は一気に進みます。 このシンプルなPREP法のエッセンスを取り入れることで、あなたの話は論理的で説得力のあるものへと変わります。
  • PREP法や5W1Hを意識するなど、「話す前の思考整理」を習慣化することで、話の精度と説得力が劇的に変わります。 簡潔な結論を導き出し、それを支える根拠と具体例を準備する。このプロセスが、あなたの伝える力を高めます。
  • 「伝える力」は、筋トレのように“習慣化”すれば誰でも伸ばせるスキルです。 才能やセンスの問題ではありません。継続的な練習と意識によって、必ず身につけることができます。

「話すのが苦手」は才能の問題ではなく、“設計”の問題。 まずは、「結論を1行で言う」練習から始めてみましょう。 あなたの話し方は、明日から変わります。