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ここで差がつく「問題解決力」を鍛えるためのトレーニング

ここで差がつく「問題解決力」を鍛えるためのトレーニング

「仕事でぶつかる壁、どう“乗り越えれば”いい?」この疑問に、現役の中堅社員も悩む【問題解決力】をテーマに答えます。この記事を読めば、課題を見つけるだけでなく、それを実際に“解決して成果を出す”ためのステップと、今日からできるトレーニング方法が分かります。これであなたも「できる人」の仲間入り!

思考法著者: 人事部 M.O

はじめに:「課題」に気付けるようになったけど、、?

前回の記事「“課題解決力”を鍛えるためのトレーニング」では、「なかなか次の一歩にステップアップできない」と悩む中堅社員に向けて、【課題発見力】をテーマにお届けしました。しかし、多くの人がその次のステージで、また別の壁にぶつかります。

「課題には気づけたけど、どうやって解決すればいいのかが分からない」 「自分なりに頑張ったつもりなのに、結果が出ないどころか空回りしてしまった」

これは、成長の意欲を持った中堅社員ほど、深く悩むポイントです。そんなあなたにいま必要なのは、「気づいた課題を前に進める力」。つまり【問題解決力】です。

本記事では、前回の「課題発見力」に続き、“見つけた課題をどう乗り越えるか”という【実行フェーズ】に焦点を当てていきます。

【本記事のゴール】

  • なぜ、解決に向けて動いてもうまくいかないのか?
  • 問題解決ができる人は、どんな思考や行動をしているのか?
  • 解決力を鍛えるには、どんな視点とスキルが必要なのか?

このような疑問に答えるべく、ビジネスの現場ですぐに役立つ情報をまとめました。「課題発見」から「問題解決」まで一気通貫で動ける人になれるよう、一緒に学んでいきましょう。

【この記事はこんな方におすすめ】

  • 問題を見つけたはずなのに、何も変わらなかった経験がある
  • 解決策を考えても、どこから手を付けるべきか悩んでしまう
  • 「自分なりに頑張っているのに結果が出ない」と感じている
  • 成果を出せる人になりたいけれど、何を変えればいいかわからない

第1章:「問題解決力」とは?

―「問題解決力」とは何か

ビジネスの現場でよく耳にする「問題解決力」。その言葉の意味を、この記事を読んでいるあなたは自分の言葉で説明できるでしょうか? 問題解決力とは、「目の前にある課題に対して、適切な打ち手を考え、実行し、成果に導く力」のことです。 単に「いいアイデアを出す力」でも、「とりあえずやってみる行動力」でもありません。 ポイントは、「課題の本質を見極めたうえで、“現実を動かす力”である」ということです。

前回の記事で扱った【課題発見力】が「何が問題なのか?」に気づく力だとすれば、今回の【問題解決力】は、「どうすればその問題を乗り越えられるか?」を考え、動く力です。

  • 課題発見力=問題に気づき、言語化する力
  • 問題解決力=その問題に対して、打ち手を考え、実行していく力

この両方が揃ってはじめて、仕事の成果は生まれます。どちらか一方だけでは不十分なのです。

―「問題解決力」を鍛えることのメリット

では、問題解決力があると、実際にどのような変化があるのでしょうか?ここでは、中堅社員としてのキャリアにおいて特に大きい3つのメリットを紹介します。

① 変化の中でも“自走できる”人材になれる 問題解決力があれば、上司がいなくても、マニュアルがなくても、状況を整理し、意思決定して動けるようになります。そんな人材は、どんな現場でも重宝され、自身のキャリアの自由度も広がります。

② キャリアの次のステージに立つための実力に直結する 問題解決力を鍛えることは、リーダーへの成長の土台をつくることでもあります。なぜなら、リーダーに求められるのは「答えを知っていること」ではなく、「チームが直面する問題に対し、整理・判断・実行を導ける力」だからです。この力がある人は、自然と“任される側”から“任せられる側”へと変わっていきます。

③ あらゆる課題に応用できる“汎用スキル”になる 問題解決力は、一度身につければ終わり、というものではありません。むしろ、「この状況をどう整理するか」、「どの打ち手が最適か」を考える力は、部署・業界・課題の種類を問わず、あらゆる仕事に応用できます。したがって、この力は、職場が変わっても、役職が変わっても、いつでも成果を出せる“あなた自身の武器”になります。


第2章:問題解決力がない原因

問題解決力も、課題発見力と同様に“鍛えることができるスキル”です。しかし実際には、解決に向けて動こうとしてもうまくいかず、途中で止まってしまう人も少なくありません。ここでは、問題解決力を発揮できない人が陥りがちな代表的な3つのパターンについて解説していきます。

問題点①:「問題の本質」がわからない

問題解決がうまくいかない人に最も多いのが、「そもそも取り組んでいる問題がズレている」というケースです。「一生懸命対応したのに、思うように改善されなかった」というときは、“問題そのもの”の認識にズレがある可能性があります。

たとえば、納期遅れが起きたときに、「人手が足りないからだ」と判断して応援要員を投入したとします。しかし、実は根本的な原因は「タスクの設計が曖昧で、進捗が見えにくい仕組みにあった」という場合、そんな状況で人を増やしても、同じような混乱が繰り返されてしまうだけです。

このように、「現象」だけを見て「本質」を見誤ると、どれだけ行動しても問題は根本から解決されず、空回りしてしまいます。

本質を捉える力=課題発見力は、問題解決の“入り口”として欠かせないスキルです。もしここに自信がない方は、まずは【課題発見力】について丁寧に振り返ってみることをおすすめしますします。

「ここで差が付く! “課題発見力”強化トレーニング」

問題点②:問題はわかっていても、手段選びを間違えてしまう

「問題の本質は見えているし、やるべきことも何となく分かっている」にもかかわらず、なぜか解決が進まない人がいます。このタイプに多いのが、「手段の選び方を間違えている」ケースです。

こうした状況に陥る原因として、

  • 解決策を「課題に対する適切さ」ではなく「思いつき」や「前例」で選んでしまっている
  • 課題と手段の「因果関係」を言語化できていない

問題解決力とは、単に動く力ではなく、本質に対して「最も効果的な手段」を選べる力でもあります。本質に気づいたあとにこそ問われるのが、この“選択の精度”なのです。

問題点③:視野が狭く、“自分だけの最適解”になってしまっている

問題の本質には気づけていても、そこから先の打ち手が浅く、どこか妥協して終わってしまう。そんな状態に陥っている人は少なくありません。その背景にあるのが、「自分の中の知識や経験だけで考えが完結してしまうこと」です。

たとえば、過去にやったことのある方法をそのまま使ったり、見聞きしたことのあるアイデアだけを組み合わせたりと、“自分の引き出しの中だけ”で解決策を探してしまっている状態です。

その結果、

  • 本当はもっと良い打ち手があるかもしれないのに思いつけない
  • アイデアが単調で、どれも決め手に欠ける
  • 「とりあえずこれでいいか」と妥協して終わってしまう

といった状況に陥ります。

問題解決力を高めるうえで大切なのは、視野を広げ、他の人や他の分野からヒントを得ようとする姿勢です。「自分の中に答えがないかもしれない」という前提で考えられる人は、より質の高い解決策にたどり着けるようになります。


第3章:問題を解決するためのステップ

問題解決力を高めるためには、思いつきや場当たり的な対応ではなく、意識的に思考と行動を整理するプロセスが重要です。ここでは、問題解決に取り組む際に意識すべき5つのステップを紹介します。このステップを身につけることで、「動いたけど成果が出なかった」ではなく、「正しい順序で、確実に前に進める」問題解決の型を身につけることができます。

STEP①:問題の本質をとらえる

問題解決を行う上で最初に必要なのは、「そもそも何を解決すべきなのか?」を正しく見極めることです。ここで大事になるのが、前回学んだ「課題発見力」です。

問題の本質をとらえるとは、つまり、「目の前で起きている現象の奥にある構造や原因に目を向ける」こと。以下のような問いかけを繰り返すことで、思考を深めていきましょう。

  • この問題が起きている背景には、どんな構造があるのか?
  • 表面上の要因と、本質的な原因はどう違うか?
  • 自分の立場からはどう見えていて、他の関係者からはどう見えているか?

問題解決のスタート地点は、「正しい問いを立てること」。ここを外さないことが、その後の解決プロセスすべての精度を決める鍵になります。

「ここで差が付く! “課題発見力”強化トレーニング」

STEP②:問題に対する解決策を考える

問題の本質をつかんだら、次は「どうすればそれを解決できるか?」を考えるフェーズに入ります。ここで重要なのは、すぐに“正解”を出そうとしすぎないこと。問題には複数のアプローチがあるのが一般的で、最初から「1つの正解」を見つけにいくよりも、まずは複数の可能性を洗い出し、見落としを防ぐことが、結果として質の高い打ち手につながります。

■ 解決策を考えるコツ①:「「ロジックツリー」で原因を分解・整理してから考える

ロジックツリー」とは、問題の原因を「なぜそうなったのか?」という問いで枝分かれさせていき、構造的に整理するフレームワークです。これを使う目的は、“正しく解決するために、何に対して打ち手を考えるべきか”を明確にすることです。

問題:納期に間に合わない

  • 作業工程が属人化している
    • → マニュアル化/標準化を進める
  • 進捗の見える化ができていない
    • → タスク管理ツールの導入・可視化のルール化
  • 初期の要件定義が曖昧
    • → 要件レビュー体制をつくる/関係者との合意形成を強化

このように原因の構造を整理すると、どこに問題の根っこがあるのかがクリアになるだけでなく、その問題に対する適切な打ち手を考えやすくなります。

■ 解決策を考えるコツ②:「MECE」で漏れなくダブりなく整理する

MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)とは、「モレなく・ダブりなく」という意味の思考フレームです。

たとえば「売上が下がっている」という問題に対し、

  • 単価を上げる
  • 顧客数を増やす
  • リピート率を高める

といった要素に分解して考えれば、見落としを防ぎ、より本質的な打ち手が見えてきます。

MECEを意識することで、場当たり的なアイデアではなく、全体像を踏まえた抜けのない発想が可能になります。

STEP③:解決策の選定・計画をする

アイデアや選択肢が出そろったら、いよいよ「どの打ち手を実行するか」を選び、実行計画に落とし込むステップに進みます。ここで大切なのは、“良さそうな案”ではなく、“実現可能で成果に近づく案”を選ぶことです。

そのために必要な視点は、主に以下の3つです。

①インパクト × 実現可能性で優先順位をつける 「どの解決策が一番適切なのか」、「どこから手を付けるべきなのか」等、優先順位を考えるときは、【実施した時のインパクト】と【実現可能性】のマトリクスで考える方法がおすすめです。効果が高く、すぐできるものから着手し、時間や調整が必要なものは、長期計画に組み込むようにしましょう。

②制約条件(人・時間・予算)を前提にする いくら良いアイデアでも、実行するリソースがなければいざというときに手が止まってしまいます。以下のような問いを持つことで、現場目線のリアルな選定が可能になります。

  • 今のチームで動かせる人員・スキルはあるか?
  • 予算やコストはどれくらいかかるか?
  • どのくらいの期間で成果が出そうか?

③「誰が・いつまでに・何をするか」を明確にする 最後に、決めた打ち手を実行計画に落とし込みましょう。ここでは 「5W1H」(誰が、何を、いつまでに、どこで、なぜ、どのように)で具体化することが重要です。曖昧なまま実行フェーズに入ってしまうと、結局動かない・迷子になる原因になります。

選定・計画は、感覚や勢いで進めず、冷静に、戦略的に、行動レベルまで落とし込むことが成功の鍵です。このステップがしっかりしていれば、次の「実行」に自信を持って移れます。

STEP④:解決策を実行する

どれだけ丁寧に準備をしても、実行しなければ何も変わりません。このステップでは、「立てた計画をいかに実行へ移すか」に焦点を当てます。中堅社員にとってこの段階で大切なのは、“動きながら学ぶ”スタンスです。実行の中で得られる学びや気づきは、座って考えているだけでは得られない貴重な情報になります。

実行時に特に意識してほしいポイントは以下の3点です。

  • まずは“できるところから”動き出す
  • 進捗と障害を“見える化”しておく
  • 最初から“完璧”を目指さない

実行フェーズは、頭で考えたことを現実に変えていくステップです。「やってみて、うまくいかなかったらどうしよう」と不安になることもあるかもしれませんが、動かなければ成功もしないのが問題解決の本質。はじめは完璧でなくても、進めながら見つかる課題や、実行して初めて得られる学びを、次の改善につなげていく。この“動きながら考える力”こそが、問題解決力を実務で活かす最大のポイントです。

STEP⑤:結果の検証・評価

問題解決のプロセスは、“やって終わり”では完結しません。実行した結果を振り返り、「なぜうまくいった(いかなかった)のか?」を検証することで、初めてその取り組みに意味が生まれます。

この段階で特に意識してほしいポイントは以下の3点です。

①成果を定量・定性の両面からチェックする 成果を振り返る際は、「数値的な結果(定量)」だけでなく、「周囲の反応やプロセスでの変化(定性)」の両方から見ていくことが重要です。

  • 定量:目標達成率、改善数値、コスト削減幅など
  • 定性:現場の声、チームの雰囲気、上司や顧客の評価など

②「原因」と「学び」をセットで言語化する 結果が良かった場合も悪かった場合も、ただ「良かった/悪かった」で終わるのではなく、

  • なぜ、うまくいったのか?
  • どこに原因があったのか?
  • 次に活かせる学びは何か?

これを、必ず言語化しておくことが大切です。

③「やりっぱなし」にならない習慣をつくる 振り返りを日々の業務に組み込むことで、継続的な成長サイクルをつくることができます。 たとえば、

  • 定期的な1on1での振り返り共有
  • チームでの振り返りMTG
  • 自分用の「振り返りメモ」習慣 など

自分の行動を客観的に見直すことが、“問題解決力を磨き続ける習慣”になります。


第4章:問題解決力を鍛えるトレーニング法

ここまで、問題解決の思考ステップを見てきました。ただし、これらのステップは“知っているだけ”では意味がありません。日々の業務の中で意識し、繰り返し実践することで、初めて本物のスキルとして身についていきます。この章では、日常の仕事の中で「問題解決力」を鍛えるためのトレーニング方法を3つ紹介します。

①「仮説思考」を日常的に習慣づける

日頃から、「なんとなくうまくいかない」で終わらせるのではなく、「なぜうまくいかないのか」、「どうすれば改善できそうなのか」を考える癖付けが大切です。

たとえば…

  • 会議で意見を言う前に、「この議題の背景は?」を仮説立てる
  • 数値が下がった理由を、データを見る前に自分なりに考える
  • 相手の反応を予測してから、提案の仕方を工夫する など

仮説思考を続けることで、思考の質とスピードの両方が鍛えられます。

②解決策の質を磨く「フレームワーク」を活用する

アイデアの幅を広げたり、論理的に整理したりするためには、思考の型(フレームワーク)を使うのがおすすめです。

たとえば…

  • MECEで抜け漏れなく要因を整理する
  • ロジックツリーで解決策を広げ、構造化する
  • KPIツリーで、達成すべき目標を細分化する

フレームワークは、経験が浅くても「質の高い打ち手」にたどり着ける強力な思考ツールです。慣れるまでは難しく感じるかもしれませんが、日常的に使うことで確実に精度は上がっていきます。

③「まず試す」→「すぐ振り返る」PDCAサイクルの回転力を鍛える

問題解決力の差は、「実行後の対応力」に現れます。

  • まずやってみる → すぐに振り返る
  • うまくいった・いかなかった原因を言語化する
  • すぐに次の改善案を考えて動く

このPDCAを早く回す習慣がある人は、どんな業務でもスピーディーに成長していきます。動きながら軌道修正できる人こそ、現場で信頼される人材になります。


おわりに:本記事のまとめ

本記事では、前回の「課題発見力」に続き、キャリアの次のステージに進みたい中堅社員に向けて、【問題解決力】をテーマにお届けしました。「課題には気づけるようになった。でも、うまく解決できない。」そんな壁に直面している人にとって、必要なのは“成果につながる動き方”です。

【本記事で学んだことの振り返り】

  • ① 問題解決力とは何か
    • → 本質を見極めた上で、最適な打ち手を考え、行動し、現実を変える力。
  • ②問題解決力が低い原因とは
    • → 問題のズレ・手段選びの甘さ・視野の狭さ。この3つが解決力を妨げる要因。
  • ③ 問題解決の5ステップ
    • → 本質を見極める → 解決策を考える → 選定・計画 →実行 → 検証・改善。
  • ④ 解決力を鍛える3つのトレーニング法
    • → 仮説思考を習慣にする、フレームワークを活用する、PDCAを高速で回す。

問題解決力は、一朝一夕で身につくものではありません。ですが、意識的に日々の取り組みを分析し、課題解決のために仮説を立て、実行していくことこそが高い問題解決力を養うことにつながります。その力を身につけたとき、あなたはもう、現場を支える“実行者”ではなく、チームや組織を前進させる“変革者”になっているはずです。