タスク設計術 基礎 ~「何を優先すべきかわからない…」と感じた時に読む記事~
「やるべきことが多すぎる」と感じているあなたへ
「やることが多すぎて、どれから手をつければいいかわからない」「Todoリストは作ってるけど、優先順位が決められない」「毎日忙しいのに、達成感がない」
社会人として一歩を踏み出したばかりのあなたなら、一度はそんな風に感じたことがあるのではないでしょうか。日々の業務に追われ、次から次へと舞い込むタスクの波に飲み込まれそうになる時、「自分は一体何をすべきなんだろう?」と立ち止まってしまうこともあるでしょう。メール、チャット、上司からの口頭依頼、突発的な顧客対応…気がつけばTodoリストはパンパンなのに、肝心の「本当に重要な仕事」に手がつけられず、一日が終わってしまう。そして、また翌朝、同じような漠然とした不安を抱えながら、業務を開始する。そんな“なんとなく仕事してる状態”から脱却したいと願う若手ビジネスパーソンは少なくありません。
しかし、安心してください。実は、「何を優先すべきかわからない」という状態は、あなたの能力の問題ではなく、「タスク設計」のスキルが不足しているだけなのです。タスク設計とは、単にTodoリストを作るだけでなく、一つひとつのタスクの「意味」や「目的」、そして「時間軸」を意識して、自ら仕事の順序を組み立てるスキルのことです。
本記事では、この“なんとなく仕事してる状態”から脱却し、「本当に成果につながるタスク」を見極めて動ける若手になるための「タスク設計術」を解説します。行動の質を変える第一歩は、“何を、なぜやるのか”を自分で設計できる力を持つことから始まります。このシンプルなタスク設計の型を身につけるだけで、あなたの仕事の生産性は劇的に向上し、忙しさに振り回されることなく、自信を持って成果を出せるようになるでしょう。
こんな人におススメ
- Todoリストがいつもパンパンで「全部大事」に見えてしまい、何から手をつけていいか迷ってしまう人
- 毎日忙しく働いているのに「やりきった感」が得られず、もやもやした気持ちで一日を終えている人
- 上司から「優先順位をつけて」と言われた時に、どうすれば良いか分からず困った経験がある人
- 一生懸命仕事をしているのに、なかなか仕事の成果や評価が上がらず、自信が持てない若手社員
- 「時間がない」「もっと効率的に働きたい」と強く願っているビジネスパーソン
この記事の重要ポイント
- タスクは「重要度×緊急度」で分類して設計すると、本当にやるべきことが見えてくる
- 成果に直結するタスクは「緊急じゃないが重要な領域」にあることを理解する
- タスク設計には「時間軸」「目的思考」「バッファ設計」の3つの要素が不可欠
- 「自分で順序をつけられる人」は、上司や周囲から信頼され、高く評価される
- 忙しさを減らす鍵は、“やらないこと”を決める設計にある
何からやるべきか分からない…の正体とは?
なぜ、私たちは「何を優先すべきかわからない」という状態に陥ってしまうのでしょうか。多くの若手ビジネスパーソンが経験するこの感覚の正体は、実は「タスク設計の欠如」にあります。彼らは、タスクの選択を「思いつき」や「割り込み」で決めてしまっていることが多いのです。
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多くの若手がタスク設計を「思いつき」や「割り込み」で決めてしまっている 朝、デスクに座って「今日は何からやろうかな」と漠然と考え、メールの通知やチャットのメッセージ、あるいは誰かからの軽い相談をきっかけに、その日の最初のタスクを決めてしまう。これが「思いつき」でタスクを決めるパターンです。また、重要な仕事に集中している最中に電話が鳴ったり、上司から「これ、今すぐやってくれる?」と割り込み依頼が入ったりすると、目の前の緊急なことにすぐ飛びついてしまう。これが「割り込み」でタスクを決めるパターンです。どちらのパターンも、自分の意思でタスクの優先順位を決められていないため、常に受け身になり、一日の終わりには疲労感だけが残る結果に繋がります。
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頭の中が“ごちゃごちゃ”なまま仕事を始めるから、迷いが生まれる 紙のTodoリストすら作らず、頭の中だけで「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」と考えていると、タスクは常に整理されないまま混沌としています。このような状態で仕事を始めると、どのタスクがどれくらいの時間かかるのか、本当に重要なのはどれなのか、といった判断がつきにくくなります。結果として、漠然とした不安や迷いが生まれ、一つのタスクに集中できず、効率が大幅に低下してしまうのです。
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「全部大事に見える」=設計されていない証拠 もしあなたのTodoリストが「すべて最優先」に見えるなら、それはタスクが設計されていない証拠です。本当にすべてのタスクが同じくらい重要で緊急な状況は稀です。多くの場合、タスクの背景にある目的や影響度を深く考えていないため、区別がつかなくなっているだけなのです。結果的に、重要度や緊急度が低いタスクにまで過剰に時間や労力を費やしてしまい、本当に集中すべきタスクがおろそかになってしまいます。
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実は、「緊急だが重要ではないタスク」に振り回されていることが多い 若手ビジネスパーソンが陥りがちなのが、「緊急だが重要ではないタスク」に多くの時間を奪われている状態です。例えば、「すぐに返信が必要なメールへの対応」、「急に頼まれた資料の誤字脱字チェック」、**「突然の来客対応」**などがこれに当たります。これらは確かに「緊急」ですが、必ずしもあなたのキャリアや会社の長期的な成果に「重要」であるとは限りません。しかし、目の前の緊急性につられて、ついそちらから手をつけてしまいがちです。
“タスクの設計”をせずに仕事を始めると、「忙しいのに成果が出ない」という罠にハマってしまいます。
優先順位がつけられる人になる3ステップ
「何を優先すべきかわからない」状態から脱却し、仕事の優先順位を自分でコントロールできるようになるためには、以下の3つのステップが非常に効果的です。
ステップ①:全タスクを書き出す(脳の外に出す)
まず最初に行うべきは、頭の中にあるすべてのタスクを、紙やデジタルツールを使って外に書き出すことです。脳は「記憶する」ことよりも「考える」ことに特化した器官です。頭の中でタスクを管理しようとすると、それだけで脳に大きな負荷がかかり、本当に集中すべきタスクに意識を向けることが難しくなります。
- 具体的な方法:
- メール、チャット、口頭での依頼、会議での決定事項、個人的なToDo…思いつく限り、どんなに小さなタスクでも構いません。すべてリストアップしましょう。
- 手書きのメモ帳、デジタルツール(Google Keep, Todoist, Trelloなど)、Excelやスプレッドシートなど、あなたが使いやすいものを選んでください。重要なのは、「脳の外に出す」ことです。
全てのタスクを可視化することで、自分が抱えている仕事の全体像を把握できるようになり、漠然とした不安が軽減されます。
ステップ②:「重要度×緊急度」で4象限に分類する
すべてのタスクを書き出したら、次にそれぞれのタスクを「重要度」と「緊急度」という2つの軸で分類します。これは、時間管理の権威であるスティーブン・コヴィーが提唱した**「時間管理のマトリクス」(通称アイゼンハワーマトリクス**)に基づいたものです。
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緊急かつ重要(第1象限):
- 例:締切間近の重要プロジェクト、クレーム対応、健康問題
- 対応: すぐに、最優先で取り組むべきタスク。
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緊急ではないが重要(第2象限):
- 例:長期的な目標達成のための企画立案、スキルアップのための学習、人間関係構築、健康維持のための運動
- 対応: 最も時間を割くべきタスク。成果に直結し、将来への投資となる。この領域に意識的に時間を使うことが、成果を出す鍵。
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緊急だが重要ではない(第3象限):
- 例:すぐに返信が必要な些細なメール、突発的な来客対応、意味のない会議
- 対応: 可能であれば委任(デリゲート)したり、効率化したり、あるいは断ったりすることを検討する。
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緊急でも重要でもない(第4象限):
- 例:暇つぶしのSNS、だらだらとしたネットサーフィン
- 対応: 極力時間をかけない。削減すべきタスク。
特に意識すべきは、「緊急ではないが重要(第2象限)」なタスクです。これらは目の前の締切がないため後回しにしがちですが、これらに時間を投資できるかどうかが、あなたのビジネスパーソンとしての成長と成果を大きく左右します。例えば、資料の骨子作成、新しい業務プロセスの改善活動、上司や先輩との定期的な情報交換などがこれに該当します。
ステップ③:行動時間と締切をセットで“予約する”
最後に、分類したタスクを具体的な「時間」に落とし込み、カレンダーやスケジュールに“予約”します。ただTodoリストに並べるだけでは、実際にいつそのタスクを行うのかが不明確なままで、結局着手できない、という事態に陥りがちです。
- 具体的な方法:
- 各タスクに対し、「いつ(日付・時間帯)」と「どれくらいの時間を使うか」を明確に決め、スケジュールにブロックとして入れ込みます。
- 例えば、**「【重要・緊急ではない】新企画の骨子作成:〇月〇日午前9時〜11時(2時間)」**のように具体的に予約します。
- 自身の集中力の特性に合わせて、タスクを配置するのも効果的です。例えば、朝は集中力が高いため、最重要タスクや思考を要する「集中系」のタスクを。午後はやや集中力が落ちるため、メール処理やデータ入力などの「処理系」のタスクを。夕方は、予備時間や今日の振り返り、明日のタスク設計に充てると良いでしょう。
「このタスクは何の目的か?」「このタスクは、誰の、どんな課題を解決するのか?」と自問すると、そのタスクの重要性や優先順位が明確になります。目的思考を常に持つことで、無駄なタスクを減らすことができます。
成果が出る若手の“タスク設計”習慣
仕事で成果を出し、周囲から高く評価されている若手社員は、単にタスクをこなすだけでなく、自分自身で仕事の「設計図」を描く習慣を持っています。彼らが実践しているタスク設計の習慣を見ていきましょう。
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タスクを「ゴール」から逆算して設計している(ToDoではなくToGoal) 成果を出す若手は、目の前の「ToDo(やるべきこと)」だけを見るのではなく、そのタスクが最終的にどのような「Goal(達成したい目標)」に繋がるのかを常に意識しています。そして、そのゴールから逆算して、今、何に取り組むべきかを決めています。 例えば、「資料作成」というタスクがあったとします。ただ「資料を作る」のではなく、「この資料で顧客に〇〇のメリットを理解させ、契約に繋げる」というゴールを明確にし、そのために必要な要素は何か、どのような構成が最適か、といったことを考えてタスクを設計します。このようにすることで、一つひとつのタスクがゴールに直結し、無駄なく効率的に仕事を進めることができます。
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自分が担当すべきこと/任せることを明確に切り分けている 全てのタスクを一人で抱え込もうとせず、チームメンバーや他部署に任せられるタスクは積極的に委任する習慣を持っています。特に若手社員は、上司から依頼されたタスクを全て自分でこなそうとしがちですが、「これは自分がやるべきか?」「誰かに任せられないか?」という視点を持つことが重要です。 例えば、情報収集やデータ入力など、比較的ルーティンワークに近いタスクであれば、周囲の協力を仰ぐことも検討します。自分のコア業務に集中し、本当に価値を生み出すタスクに時間を使うためにも、タスクの「切り分け」は不可欠です。
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毎朝「今日の最重要タスク」を1つ決めてから動いている 多くのタスクがある中でも、成果を出す人は「今日、これだけは絶対にやり遂げる」という最重要タスクを毎朝1つだけ決めています。これは、第2象限(緊急ではないが重要)のタスクであることが多いです。 例えば、「今日は〇〇プロジェクトの企画書の骨子を完成させる」と決めたら、他の緊急ではないタスクは後回しにしてでも、まずその最重要タスクに集中します。これにより、一日の終わりには必ず「これだけはできた」という達成感が得られ、それが次の日のモチベーションにも繋がります。
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締切前日でなく“仕上げる日”をカレンダーに入れている 一般的な締切(デッドライン)だけでなく、そのタスクを「完璧に仕上げる日」を前倒しで設定し、カレンダーに組み込む習慣を持っています。例えば、資料の提出が金曜日なら、水曜日を「最終チェック・完成日」として設定するのです。 これにより、締切直前の慌ただしさや焦りから解放され、より質の高いアウトプットを生み出すことができます。また、突発的な事態が起きても対応できる「バッファ」が生まれるため、精神的な余裕も生まれます。
成果を出している人ほど、「やらないこと」の設計が上手です。彼らは、重要ではないタスクや、自分でなくてもできるタスクを明確に「やらない」と決めることで、本当に重要なタスクに集中する時間を確保しています。
よくある壁とその乗り越え方(Q&A)
タスク設計を実践しようとすると、いくつかの壁にぶつかるかもしれません。ここでは、若手ビジネスパーソンがよく直面する課題と、その具体的な乗り越え方をご紹介します。
Q1:全部大事に見えて、どうしても優先順位がつけられません…
先にも述べたように、タスクが全て重要に見えるのは、そのタスクが最終的にどのような成果に繋がるのか、その「目的」が不明確なためです。
A. 「このタスクが成果にどう影響するか?」の問いを使ってください。
個々のタスクを見るだけでなく、「このタスクをやり遂げたら、どのような成果が生まれるのか?」「この成果は、私の目標やチームの目標にどう貢献するのか?」と自問してみてください。成果や目的への貢献度で優先順位を考えると、判断しやすくなります。 例えば、メール返信も「単なる返信」ではなく「顧客との信頼関係構築」という目的があれば、優先度は高まります。目的が不明なタスクは、上司に確認するか、あるいは本当に必要か再検討する勇気を持ちましょう。
Q2:急な依頼が入ると、計画が崩れてしまいます
計画を立てても、急な割り込みタスクでいつも台無しになる、と感じる人もいるでしょう。ビジネスシーンにおいて、突発的な依頼はつきものです。
A. 毎日15〜30分の「バッファ時間」を夕方に設けてください。
計画通りに進まないことを前提として、あらかじめスケジュールの中に「空白の時間(バッファ時間)」を設けておくことがコツです。例えば、一日の終わりに15分から30分程度の時間を「突発対応・調整時間」として確保しておきます。 この時間に、急に入った割り込みタスクを処理したり、今日終わらなかったタスクを片付けたりします。このバッファがあることで、急な依頼が入っても慌てることなく対応でき、計画が大きく崩れることを防ぎ、精神的な余裕も生まれます。
Q3:タスクが多すぎて時間が足りません…
常にタスクに追われ、時間不足を感じている場合、本当にそのタスク全てを自分がやるべきなのか、という視点が欠けている可能性があります。
A. 本当に「自分がやるべきか?」を見直してください。
引き受けたタスクすべてが“あなたの仕事”とは限りません。中には、他の人がより効率的にできるタスクや、そもそも誰かがやる必要のないタスクも含まれているかもしれません。
- 「これは、私でなければできない仕事か?」:専門性や責任の観点から、本当に自分だけがこなせるタスクか。
- 「誰かに任せられないか?」:チームメンバーや後輩、あるいは他の部署に依頼できないか。
- 「このタスクは、本当にやる必要があるのか?」:そのタスクの必要性を再評価し、もし不要であれば、上司に相談して中止できないか。
これらの問いを自らに投げかけ、タスクの「断捨離」や「委任」を積極的に検討することで、本当に重要なタスクに集中できる時間を生み出すことができます。
まとめ
今回の記事では、社会人1〜3年目の若手ビジネスパーソンが陥りがちな「何を優先すべきかわからない」という悩みを解決するための「タスク設計術」について解説しました。
改めて、この記事の重要ポイントを振り返りましょう。
- タスクの優先順位がつけられないのは、あなたの能力の問題ではなく、「設計」が不足しているからでした。闇雲にタスクをこなすのではなく、戦略的に設計する視点が重要です。
- 「全タスクの可視化→重要度×緊急度で分類→行動時間と締切の予約」の3ステップを実践することで、タスクに関する迷いが消え、効率的に仕事を進められるようになります。特に「緊急ではないが重要」なタスクに意識的に時間を使うことが成果への鍵です。
- 成果が出る人は、「大事なこと」に時間を使い、「緊急対応」に振り回されない「タスク設計」の習慣を持っています。ゴールからの逆算、タスクの切り分け、「やらないこと」の決定などがその特徴です。
- 「時間がない」「忙しい」という状態は、タスク設計力で変えられます。あなたの1日は、あなた自身が設計することで、より充実したものへと変えられます。
「時間がない」「忙しい」は、才能の問題ではなく、タスク設計力で変えられます。
まずは今日、「優先すべきことは何か?」を1つだけ書き出すことから始めてみてください。それが、忙しさに振り回される毎日から卒業し、成果を出せるビジネスパーソンへと成長する第一歩となるでしょう。