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ビジネス会話の組み立て方
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図解で学ぶ「ビジネス会話の組み立て方」入門 ~話が伝わらない若手へ~

論理的に話すのが苦手な社会人1〜3年目に向けて、“伝える順序”と“話の構造”を図解で解説。PREP・SDSなどの話法を使いこなすための具体的ステップと練習法を紹介します。

基礎ビジネススキル著者: 人事部 A.M

図解で学ぶ「ビジネス会話の組み立て方」入門 ~話が伝わらない若手へ~

「伝えてるつもりなのに、なんかズレてると言われる」 「頭ではわかってるのに、話すと伝わらない」 「“要するに?”と聞かれて、うまくまとめられない」

そんな悩み、ありませんか? 社会人になりたての若手にとって、「話の組み立て方」 は一朝一夕で身につくものではありません。新入社員研修では、挨拶や名刺交換は習っても、実践的な 「ビジネス会話の型」 を学ぶ機会は少ないかもしれません。上司や先輩に説明しても「で、何が言いたいの?」と聞かれたり、自分の話が途中で遮られたりすると、「自分は話すのが苦手なのか…」と自信を失いかけてしまうこともあるでしょう。

でも、実はこの“話が伝わらない”という問題、あなたの能力のせいではありません。多くの場合、それは話の「構造」を知らないせいなのです。私たちは、学校教育で「結論から話す」とか「論理的に話す」といった抽象的なアドバイスは耳にしても、具体的に「どう話せば伝わるのか」という実践的な方法を体系的に学ぶ機会がありませんでした。そのため、ビジネスの現場で求められる会話力に戸惑ってしまうのは、ごく自然なことなのです。

本記事では、話が通じる人が共通して使っている「ビジネス会話の型」 を図解でわかりやすく紹介します。複雑に聞こえる会話も、いくつかのシンプルな 「フレームワーク」 に当てはめるだけで、劇的に伝わりやすくなります。この記事を読めば、あなたの話がなぜ伝わらなかったのかが分かり、どうすれば伝わるようになるのか、具体的な実践方法を身につけることができるでしょう。もう「話が伝わらない…」と悩む日々とはお別れです。

こんな人におススメ:

  • 上司や先輩との会話が噛み合わず、いつもモヤモヤする人
  • 自分の話を「で、結論は?」と遮られてしまうことが多い人
  • 報連相で言いたいことがまとまらず、話が長くなってしまう人
  • プレゼンや会議で「何が言いたいのかわからない」と言われた経験がある人
  • 話す前に頭が真っ白になってしまい、伝えたいことを忘れてしまう人

この記事の重要ポイント:

  • ビジネス会話は「構造」で伝える力が決まる
  • 話の組み立てには型がある:「PREP法」「SDS法」「結論→理由→事例」など
  • 図で可視化すれば、話の“詰まり”が減り、伝わりやすくなる
  • 頭の中を「話す順序」で整理することで、自信を持って話せるようになる
  • 話の型を“使えるようにする”ための練習方法も解説

なぜ、あなたの話は伝わらないのか?

話が伝わらないと感じる時、その根底にはいくつかの共通する原因があります。あなたが特別なのではなく、多くのビジネスパーソンが一度は経験する壁でもあります。まずは、その原因を深く掘り下げてみましょう。

「言いたいことがまとまらない」は、構造を知らないせい

多くの人が「話がまとまらない」と感じるのは、頭の中に情報が散らばっていて、それを 「どのような順番で、どのくらいの分量で話せばいいか」という「構造」を知らない ことが原因です。私たちは日々、様々な情報を受け取り、考え、処理しています。しかし、その思考のプロセスと、実際に人に伝えるためのプロセスは全く別物です。

思考は自由で、時に飛び飛びにアイデアが浮かびます。しかし、会話は相手があって成立するものであり、相手が理解しやすいように順序立てて整理された情報が求められます。この「思考」から「伝達」への変換がうまくいかないと、「結局何が言いたいの?」というフィードバックにつながってしまうのです。例えるなら、美味しい料理の材料は揃っているのに、調理法を知らないために、ただ材料を並べただけの状態になってしまっているようなものです。

よくある失敗例:情報過多/話があちこちに飛ぶ/前置きが長すぎる

話が伝わらない若手に共通する、典型的な失敗パターンをいくつか見てみましょう。もしかしたら、あなたにも心当たりがあるかもしれません。

  • 情報過多で、何が重要か分からない: 「〇〇の件なんですが、まず先週A社から連絡がありまして、その前に担当のBさんと打ち合わせをした時に…」と、時系列順に全ての情報を羅列してしまいがちです。聞き手は、全ての情報を処理しきれず、結局何が一番伝えたいことなのかを見失ってしまいます。必要な情報と、そうでない情報の区別ができていない状態です。

  • 話があちこちに飛ぶ(論理の飛躍): ある話題を話している途中で、関連する別の話題に突然移ってしまったり、前提となる説明が抜けていたりするケースです。話の論理的な繋がりが欠如しているため、聞き手は話の意図を掴むのに苦労し、頭の中で「?」が飛び交うことになります。

  • 前置きが長すぎる/結論がなかなか出てこない: 「ご相談なんですが、実は昨日、私が担当しているC社からメールが来て、それがですね、内容としては…」のように、本題に入るまでに多くの説明や経緯を話しすぎてしまうパターンです。聞き手は結論を急いでいるのに、いつまでも話が終わらないため、イライラしたり、途中で聞くのをやめてしまったりすることがあります。特に忙しい上司にとっては、時間の無駄だと感じさせてしまうことも。

これらの失敗は、いずれも「聞き手視点」が抜けていることで起こります。あなたは「すべてを伝えなければ」と思っているかもしれませんが、聞き手はあなたが思うほど多くの情報を一度に処理できませんし、そこまでの興味を持っていないかもしれません。

聞き手は“結論”を最初に知りたい

ビジネスシーンにおいて、聞き手が最も知りたいのは何でしょうか? それは、「結論」 です。上司や先輩、顧客は、限られた時間の中で、あなたの話の「核」を素早く掴みたいと思っています。例えば、あなたが「売上が少し下がってまして…」と話し始めたら、彼らはすぐに「で、どれくらい下がったの?」「何が原因で、どうするつもりなの?」という結論や対策を考え始めます。

結論を後回しにすると、聞き手はあなたの話の全体像を掴めず、話の意図を予測しながら聞くことになります。これは聞き手にとって大きな負担であり、ストレスです。「早く結論を言ってくれ」という心理状態になってしまい、結果として「で、何が言いたいの?」と遮られることにつながるのです。

相手に伝えるには「順番」と「絞り込み」がカギになる

話が伝わるようになるための最初のステップは、「話す順番」と「情報の絞り込み」 を意識することです。

  • 話す順番: 聞き手が最も知りたい「結論」を最初に持ってきたり、話の全体像を冒頭で示したりするなど、聞き手の理解を助けるための順序で話すことです。
  • 情報の絞り込み: 伝えたいことをあれもこれもと詰め込むのではなく、本当に必要な情報だけを厳選し、シンプルにすることです。補足情報は後回しにするか、必要なければ省く勇気も必要です。

この二つを意識するだけで、あなたの話は驚くほど明確になり、相手に「なるほど、そういうことか!」と理解してもらえるようになるでしょう。


伝わる話し方は“型”で決まる:図解でわかる3つの基本構造

話が伝わる人の多くは、意識的か無意識的かにかかわらず、特定の 「型」 を使って話を組み立てています。これらの型は、聞き手が話を理解しやすいように設計されており、論理的な思考のフレームワーク としても非常に有効です。ここでは、ビジネスシーンで特に頻繁に使われる3つの基本構造を図解で解説します。

PREP法(Point→Reason→Example→Point)

PREP法は、最も基本中の基本であり、あらゆるビジネス会話に応用できる強力な型です。

  • Point(結論): まず、最も伝えたい**「結論」**を最初に話します。
  • Reason(理由): 次に、なぜその結論に至ったのか**「理由」**を明確に説明します。
  • Example(具体例/事例): その理由を裏付ける具体的なデータや事例、エピソードを挙げます。
  • Point(再結論): 最後に、もう一度結論を繰り返し、全体の要点をまとめます。

このPREP法を使うことで、聞き手は最初に結論を知るため、話の全体像を掴みやすくなります。その後の理由や具体例も、結論と関連付けながら聞くことができるため、理解度が深まります。特に、意見を述べる時、提案をする時、問題解決策を提示する時に非常に有効です。

【図解:PREP法】

PREP法
PPoint(結論)
RReason(理由)
EExample(具体例/事例)
PPoint(再結論)

実例:PREP法を使った「伝わる話」

  • P(結論): 「先日のA社への提案資料ですが、〇〇課長への承認は本日中に完了できます。」
  • R(理由): 「理由は、本日午前中に最終確認を終え、課長への説明時間を午後14時に確保できたからです。」
  • E(具体例): 「資料の内容も、課長から事前にいただいていたフィードバックを全て反映しており、特に懸念点はありません。」
  • P(再結論): 「つきましては、本日中に承認をいただき、明日にはA社に提出できる見込みです。」

SDS法(Summary→Detail→Summary)

SDS法は、主に報告や説明、要約を行う際に非常に有効な型です。

  • Summary(概要): まず、話全体の 「概要」「要点」 を簡潔に伝えます。
  • Detail(詳細): 次に、概要で伝えた内容の 「詳細」 を具体的に説明します。
  • Summary(まとめ): 最後に、もう一度 「概要」 を繰り返し、全体のポイントを再確認します。

PREP法が「意見や提案」に適しているのに対し、SDS法は「事実の伝達」や「情報の共有」に強みがあります。最初に全体像を把握させることで、聞き手は詳細を聞く準備ができます。特に、会議の冒頭でのアジェンダ説明や、プロジェクトの進捗報告などで活用すると、非常にスムーズに話を進めることができます。

【図解:SDS法】

SDS法
SSummary(概要/要点)
DDetail(詳細)
SSummary(まとめ/再要点)

実例:SDS法を使った「伝わる話」

  • S(概要): 「本日の会議では、新規システム導入の進捗状況についてご報告いたします。現在のところ、計画通り順調に進捗しております。」
  • D(詳細): 「具体的には、フェーズ1の要件定義が先週完了し、今週からフェーズ2の設計フェーズに入りました。各担当者との連携もスムーズで、特に大きな問題は発生していません。ベンダーとの調整も滞りなく進んでいます。」
  • S(まとめ): 「以上のことから、新規システム導入プロジェクトは引き続き計画通りに進捗しており、目標期日内に完了できる見込みです。」

結論→理由→事例→行動提案の実践フォーマット

これは、PREP法をビジネスシーンでの具体的な**「行動提案」**まで落とし込んだ応用型です。特に、上司への提言や、顧客へのクロージングなどで有効です。

  1. 結論: 最も伝えたい結論や、自分が何をしてほしいか(提案)を明確に述べる。
  2. 理由: なぜその結論に至ったのか、その提案が必要なのかの根拠を説明する。
  3. 事例: 具体的なデータ、成功事例、失敗事例、市場の動向など、話を補強する客観的な事実や具体例を提示する。
  4. 行動提案: 最後に、聞き手に具体的にどのような行動を取ってほしいのか、次に何をすべきかを明確に提案する。

このフォーマットを使うことで、単に情報を伝えるだけでなく、相手に具体的な行動を促すことができます。

【図解:結論→理由→事例→行動提案】

結論→理由→事例→行動提案
結論
理由
事例(データ・具体例)
行動提案(次にどうしたいか)

実例:結論→理由→事例→行動提案を使った「伝わる話」

  • 結論: 「〇〇プロジェクトの納期を、現状の来月末から再来月末に延長することをご検討いただきたいです。」
  • 理由: 「当初想定していなかったシステム連携の課題が複数浮上しており、このままでは品質を担保できないと判断したからです。」
  • 事例: 「具体的には、先週のシステムテストでデータ連携エラーが3件発生し、さらに類似システムの他社事例を調べたところ、同様の課題で開発期間が平均20%延長されていることが判明しました。これらを解決するには、追加で約1ヶ月の検証期間が必要です。」
  • 行動提案: 「つきましては、来週の定例会議にて、納期延長の承認と、追加人員の配置についてご検討いただけないでしょうか。」

【図解】実例比較:「伝わらない話」vs「伝わる話」

ここまでの内容を、具体的な会話例で比較してみましょう。同じ内容でも、「型」を使うだけで、どれだけ伝わりやすさが変わるか実感できるはずです。

■ 例:上司への進捗報告

【伝わらない話(型なし)】

「課長、A案件の件なんですが、えっと、昨日から資料作成に入ってまして、ちょっとデータが揃ってない部分があったり、他の案件の問い合わせも結構来ちゃってて、思ってたより時間がかかってるんです。今日の終わりまでには…どうでしょうか、うーん…」

  • 問題点: 結論が不明確、情報が羅列されている、言い訳がましい、見通しが立っていない。聞き手は「で、結局どうなってるの?」とイライラします。

【伝わる話(PREP法を応用)】

「課長、A案件の資料作成の進捗をご報告します。本日中には完成が難しい状況です。(P)

理由は2点あります。(R) 1点目は、必要なデータの一部(市場調査データ)がまだ揃っていないためです。(R-詳細1) 2点目は、本日午前中に緊急の顧客対応が入り、想定より時間が取れなかったためです。(R-詳細2)

現時点では、本日中に全体の7割程度まで作成できそうです。特に市場調査データは、Bさんからの連携待ちです。(E)

つきましては、明日午前中までには完成させ、10時には課長にご確認いただけます。(P)Bさんへのデータ催促と、残りの作業を優先して進めます。」

  • 良い点: 結論が明確、理由が整理されている、具体的な状況説明がある、次の行動が見える。上司はすぐに状況を把握し、的確な指示を出すことができます。

このように、ほんの少し話の**「型」**を意識するだけで、あなたの会話は劇的に変化します。


話す前の準備で8割決まる:「頭の中の整理術」

どんなに素晴らしい型を知っていても、話す前に頭の中が整理されていなければ、うまく使うことはできません。ビジネス会話の成功は、実は 「話す前の準備」で8割方決まると言っても過言ではありません。ここでは、話す前にあなたの頭の中をクリアにするための具体的な 「整理術」 を紹介します。

伝えたいことを3点に絞る

人は一度に多くの情報を処理できません。話す内容をあれもこれもと詰め込むと、結局何も伝わらない結果に終わってしまいます。そこで、「最も伝えたいことは何か?」を考え、3点に絞り込むことを意識しましょう。

「3点」というのは、人が短期的に記憶しやすく、かつ伝えられる情報量として最適な数だとされています。例えば、報告であれば「現状、課題、次の一手」の3点、提案であれば「提案内容、メリット、費用」の3点、というようにまとめます。

  • 絞り込みのポイント:
    • **「本当に相手が知りたいことか?」**という聞き手視点で考える。
    • **「この3点が伝われば、相手は次にどう動くか?」**という目的意識を持つ。
    • **不要な情報は思い切って捨てる勇気を持つ。**補足は、質問された時に初めて話す、くらいの意識でOKです。

この**「3点絞り込み」**は、あなたの話に「幹」を与え、聞き手が迷子にならないための道しるべとなります。

話す内容を図で組み立てる「思考スケッチ」活用法

頭の中を整理する際に、文字だけで考えるのは限界があります。そこでおすすめなのが、「思考スケッチ」です。これは、話す内容を簡単な図や箇条書き、キーワードで紙やホワイトボードに書き出し、視覚的に整理する方法です。

例えば、

  • 中心に結論を書き、そこから矢印で理由を伸ばす。
  • 理由の横に、具体的な数字や事例を書き添える。
  • 全体の話の流れをブロック図のように配置し、どこからどこへ話が飛ぶのかを明確にする。
思考スケッチの例
話す内容を図で整理する思考スケッチのイメージ

このような思考スケッチを描くことで、

  • 話の全体像が俯瞰できる
  • 論理の飛躍や情報の不足に気づきやすい
  • 話す順番が明確になる
  • 頭の中が整理され、不安が軽減される

といったメリットがあります。きれいに描く必要はありません。自分だけが分かれば良いのです。簡単なメモ書き程度でOKです。

書き出して→順序立て→話す練習、の3ステップで精度UP

「話す前の準備」は、以下の3ステップで実践することで、その精度を格段に向上させることができます。

  1. 書き出す(アウトプット): 伝えたい情報を、まずは頭の中にあるものを全て紙やメモに書き出してみましょう。キーワード、思いついたこと、関連情報など、どんなに些細なことでも構いません。この段階では、順序や整理は気にせず、とにかく出すことが重要です。
  2. 順序立てる(構造化): 書き出した情報の中から「本当に伝えたいこと(結論)」を特定し、それを核としてPREP法やSDS法などの型に当てはめて、話す順番を組み立てます。 不要な情報は削ぎ落とし、関連する情報はグループ化するなど、情報の整理を行います。先ほどの 「思考スケッチ」 が役立つのはこの段階です。
  3. 話す練習(リハーサル): 組み立てた内容を、 実際に声に出して話す練習をしてみましょう 。最初は独り言で構いません。タイマーを使って時間も測ってみると、適切な話すスピードや長さが把握できます。可能であれば、録音してみたり、信頼できる同僚や友人に聞いてもらったりするのも良い練習になります。

この3ステップを繰り返すことで、あなたは話す前に「どう話せばいいか」が明確になり、自信を持って本番に臨めるようになるでしょう。

話す前に「聞き手にとって何がメリットか?」を考える

話す前の準備で最も重要なことの一つが、「聞き手にとって、この話を聞くことでどんなメリットがあるのか?」 を考えることです。自分の言いたいことだけを一方的に話すのではなく、常に相手の立場に立って考える 「聞き手ファースト」の視点 を持つことが、伝わる会話の基本です。

例えば、

  • 上司への報告: 「この報告を聞けば、課長は次の会議でスムーズに発言できるな」
  • 同僚への依頼: 「この依頼を受ければ、彼は自分の仕事の効率も上がるな」
  • 顧客への提案: 「この提案を受け入れれば、お客様はこんな課題が解決できるな」

このように、聞き手が話を聞くことで得られる利益や、解決できる課題を意識することで、あなたの話はより説得力が増し、相手の 「聞く姿勢」 を引き出すことができます。話の冒頭でそのメリットを簡潔に伝えることも、相手の関心を引きつける効果的な手法です。


よくある壁とその乗り越え方(Q&A形式)

「頭では分かったけど、いざ実践となると難しい…」と感じるのは当然です。ここでは、ビジネス会話の組み立て方を実践する上で、多くの若手がぶつかる「よくある壁」と、その具体的な乗り越え方をQ&A形式で解説します。

Q1. 話す前に頭が真っ白になります。どうすれば良いですか?

A. 話す前に頭が真っ白になるのは、多くの場合、「準備不足」 が原因です。何を話すか、どんな順番で話すか、というロードマップが頭の中にないため、いざ話そうとすると思考がフリーズしてしまうのです。

この壁を乗り越えるには、次の対策が有効です。

  • 話す順番を「紙に書いて覚えておく」: 完璧な原稿を作る必要はありませんが、話の要点(結論、理由、具体例など)と、それぞれの話す順序を箇条書きでメモしておきましょう。会議や報連相の前に、そのメモをサッと確認するだけでも、安心感が生まれ、頭が真っ白になるのを防げます。
  • 「結論だけは先に決めておく」: 最低限、話す前に「今日の結論はこれだ!」と心の中で決めておきましょう。結論さえ言えれば、そこから話を発展させる余地が生まれます。
  • 練習を繰り返す: 初めはぎこちなくても、前述の「書き出して→順序立て→話す練習」を繰り返すことで、次第に頭の中で話の型を組み立てるスピードが上がり、自然と話せるようになります。スポーツや楽器の練習と同じで、反復が自信につながります。

Q2. プレゼンで途中から何を言ってるのかわからなくなります。なぜでしょうか?

A. プレゼンの途中で話が迷走してしまうのは、多くの場合、「自分の話の道しるべを見失っている」 ことが原因です。話の全体像や、次に何を話すべきかという目印がないと、頭の中で情報が混乱し、話が支離滅裂になってしまいます。

この状況を改善するためには、以下の方法を試してみてください。

  • スライドに「話の流れ」を明記する: プレゼン資料の冒頭や、各章の最初に「本日のアジェンダ」や「この章で伝えること」など、話の全体像や流れを示すスライドを挿入しましょう。聞き手だけでなく、あなた自身も「今、話のどの部分にいるのか」を常に確認できます。
  • 各スライドに「キーワード」や「メッセージ」を大きく表示する: 1枚のスライドで伝えたい核となるメッセージやキーワードを大きく表示することで、あなたが話すべき内容を常に意識できます。スライドは単なる資料ではなく、あなたの「カンペ」であり「道しるべ」なのです。
  • 「型」の意識を強く持つ: プレゼン全体をPREP法やSDS法などの大きな型で構成し、それぞれのセクションも小さな型に当てはめる意識を持ちましょう。「今、私は理由を話している」「次は具体例だ」と意識するだけで、話が脱線しにくくなります。

Q3. 上司から「で?」と聞かれて怖くなります。どうすれば防げますか?

A. 上司からの「で?」という質問は、確かにプレッシャーを感じますよね。これは、あなたが**「結論を先に話していない」**ために起こる典型的な反応です。上司は多忙であり、あなたの話の背景や経緯よりも、まず「何が起こったのか」「何が言いたいのか」という結論を素早く把握したいのです。

この「で?」を防ぐための最も効果的な方法は、PREP法の「P(結論)」を先に言うことです。

  • 必ず「結論から」始める:
    • NG例: 「昨日、C社に訪問したんですが、その際に先方が〇〇についてご不満をおっしゃっていて…」
    • OK例: 「課長、C社の〇〇の件でご報告です。先方のAシステム導入を見送りたいとの意向でした。(P)」
  • 「〜です」「〜でありません」で言い切る: あいまいな表現を避け、「〜です」「〜ます」と断定的に話すことで、話に自信が生まれ、相手も安心して聞くことができます。
  • 要点を短くまとめる練習: 日常の短い会話(エレベーターピッチなど)でも、常に結論から話す練習を意識しましょう。慣れてくれば、自然と結論から話せるようになります。

上司は「あなたを困らせたい」わけではなく、「効率的に情報を把握したい」だけなのです。結論を先に伝える習慣をつけることで、上司とのコミュニケーションは劇的にスムーズになり、あなたの評価も向上するでしょう。


まとめ

社会人1〜3年目の若手ビジネスパーソンにとって、「話が伝わること」 は、仕事のスピード、信頼、そして評価を大きく左右する重要なスキルです。これまで「話が伝わらない…」と悩んでいたとしても、それはあなたの能力のせいではありませんでした。ただ、「ビジネス会話の型」 を知らなかっただけなのです。

本記事で解説した重要ポイントをもう一度確認しましょう。

  • ビジネス会話の基本は「型に当てはめて話す」こと:特に**「PREP法」「SDS法」**は、あなたの話の強力な設計図となります。
  • 話す前に「順番」「結論」「目的」を整理すれば伝わりやすくなる:「伝えたいことを3点に絞る」「聞き手のメリットを考える」といった準備が、会話の成功を大きく左右します。
  • 図やスケッチで構造化すると、緊張が減って自信になる:「思考スケッチ」を活用して、頭の中を視覚的に整理する習慣をつけましょう。
  • 話が伝わるようになると、仕事のスピードも評価も変わる!:上司や先輩、顧客とのコミュニケーションがスムーズになり、信頼関係が構築され、任される仕事の質も量も変わっていくでしょう。

話が伝わらないのは、あなたの能力のせいではありません。「型」を知り、「順序」を意識するだけで、驚くほど変わります。

話すのが苦手だと思っていたあなたにこそ、最初に知ってほしい“伝える技術”です。

この 「ビジネス会話の組み立て方」 は、一度身につければ一生もののスキルです。今日から、日々の会話の中で意識的に「型」を当てはめて話す練習を始めてみてください。最初は難しく感じるかもしれませんが、継続することで必ずあなたの強みになります。あなたの話が「デキる若手」の証となる日もそう遠くはないでしょう。