“伝わる”資料作りの基本~ポイント編~
はじめに:なぜ資料作成はこんなにも難しいのか?
上司への報告、クライアントへの提案、求職者向けの会社説明など、ビジネスの現場では、さまざまな相手に向けて「伝える資料」を作る機会が日常的にあります。
しかし、それと同時にこんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?
- 「何から手をつければいいのかわからない」
- 「毎回、資料作りに時間がかかる」
- 「頑張って作ったのに、結局うまく伝わっていない気がする」
特に、新入社員や資料作成に慣れていない方にとって、資料づくりは“苦手意識を抱きやすい業務”のひとつです。
なぜ、資料作りはこんなにも難しいのでしょうか?それは多くの場合、「作り始める前の設計」 や 「伝える意識」が抜け落ちているから です。見た目を整えることや、情報を詰め込むことに意識が向きすぎて、「誰に、何を、どう伝えるか」 という根本が抜けてしまっているのです。
この記事では、そんな悩みを持つ方に向けて、伝わる資料を作るための考え方と、すぐに実践できるステップ をわかりやすく解説していきます。読み終えるころには、「伝えたいことが伝わる資料」を、自信をもって作れるようになっているはずです。
この記事はこんな人におすすめ
- 資料を作成してもうまくターゲットに伝わらない方
- 最近資料作成をすることになった若手社員
- 資料作成に毎回時間がかかってしまう方
- 「相手に伝わる」資料作成のポイントを知りたい方
目次
1. 第1章:「伝わる資料」とは
- 1-1. 資料作成の本質(そもそも資料作成は何のためにやるのか?)
- 1-2. 伝わる資料をつくるメリット 2. 第2章:伝わる資料の5つのポイント
- 2-1. 「誰に」「何を」伝えるかを明確にする
- 2-2. 読み手の立場やニーズを意識する
- 2-3. 1スライド1メッセージを徹底する
- 2-4. 情報を論理的・構造的に整理する
- 2-5. シンプルで見やすいデザインにする 3. 終わりに:今回のポイントのおさらい
- 3-1. 今回のポイント
- 3-2. 次回の学習内容

第1章:「伝わる資料」とは?
資料作成の本質とは
資料を作成する時、つい「情報をまとめること」や「見た目を整えること」に集中してしまいがちです。もちろんそれも大切な要素ですが、最も大切にすべきことは、「資料の目的を果たせるかどうか」です。
では、その目的とは何でしょうか?それは、「相手を動かすこと」です。例えば、上司への企画資料なら、「企画を理解してもらい、承認を得て次のステップに進めること」。クライアント向けの提案資料なら、「相手に納得してもらい、契約・発注に繋げてもらうこと」が目的になります。
つまり、資料は自分の考えを整理し、相手に伝えるためのツールであり、「相手を動かすための道具」だと捉えるべきなのです。
伝わる資料を作ることのメリット
「伝わる資料」を作れるようになると、仕事が大きく変わります。
- 上司との認識のずれが減り、意思決定がスムーズになる
- クライアントの納得感が高まり、提案が通りやすくなる
- 説明する時間が短縮でき、相手の理解も深まる
- 自分の考えを整理する力、わかりやすく伝える力が自然と身につく
つまり、資料作成スキルはビジネスパーソンとして成果を出すための必須スキルのひとつです。そしてこれは、センスや才能ではなく、「考え方」と「手順」を身につければだれでも習得できるスキルです。
次章では、そんな「伝わる資料」を作るために欠かせない【5つのポイント】を解説していきます。

第2章:「伝わる資料」の5つのポイント
「伝わる資料」は、センスやデザイン力だけでできあがるものではありません。重要なのは、「相手に届く設計がされているかどうか」。ここでは、どんな資料にも応用できる5つのポイントを紹介します。
ポイント①:「誰に」、「何のために」、「何を」伝えるかを明確にする
まず大事なのは、この資料は「誰に」向けたもので、「何のために」作成し、「何を」伝えるものなのかをはっきりさせることです。
- 誰に:上司、クライアント、求職者など
- 何のために:企画を承認してもらうため / 商品を購入してもらうため / 会社の魅力を伝えて次の選考に進んでもらうためなど
- 何を:企画内容 / 製品の特徴や強み / 会社の魅力など
ここで特に意識したいのが、相手にどんな感情を持ってもらい、最終的にどんな行動をとってもらいたいかという「ゴール設定」です。
たとえば:
- 上司に向けた企画資料 →「納得してOKを出してもらう」
- クライアント向けの提案書 →「価値を感じてもらい、導入を検討してもらう」
- 求職者向け資料 →「魅力を感じてもらい、エントリーしたくなる」
このゴールを最初に設定しておくと、資料全体の内容や見せ方に一貫性が生まれ、伝わる精度が格段に高まります。
ポイント②:読み手の立場やニーズを意識する
資料を作るとき、多くの人がつい「自分が伝えたいこと」ばかりを中心に構成してしまいがちです。しかし、本当に伝わる資料とは、「相手が知りたいこと」にフォーカスされた資料です。
たとえば、提案書をつくるとき、「これをやりたいんです!」だけではなく、「なぜそれが必要なのか」「どんな効果があるのか」を説明すると、相手は納得しやすくなります。資料は「自分の頭の中」ではなく、「相手の頭の中」を想像してつくると、グッと伝わりやすくなります。
「相手はこの資料を見て、どんな情報があれば納得しやすいのか?」「どんな流れなら理解しやすいのか?」と、読み手の立場に立って考えることが大切です。
ポイント③:1スライド1メッセージを徹底する
よくある失敗は、1枚のスライドに言いたいことを詰め込みすぎてしまうことです。たくさんの情報があると、「何を言いたいのか」が逆に伝わらなくなります。
そこでおすすめなのが、「1スライドにつき、伝えることは1つだけ」というルールです。たとえば、「このサービスを導入すべき理由は●●だ」ということが1つのメッセージだとしたら、そのスライドでは上記の理由に絞って説明し、次のスライドで効果や事例を紹介するように分けましょう。
「このスライドで何を伝えたいのか?」を毎回問いながら作ることで、読み手も迷わず理解できます。
ポイント④:情報を論理的・構造的に整理する
どんなに正しい情報でも、伝える順番や並べ方がバラバラだと、相手には届きません。そこで活用したいのが、「ピラミッドストラクチャー」です。
ピラミッドストラクチャーとは、「結論→理由→具体例」という論理の流れで情報を整理するフレームワークです。ピラミッドのように、上に伝えたいメッセージを置き、その下に理由や根拠、さらにその下に事例やデータを配置していきます。
例えば、
- 【結論】 この営業ツールの導入をおすすめします
- 【理由①】 営業効率が上がる
- 【具体例】 同業他社では訪問数が平均30%向上
- 【理由②】 導入コストが低い
- 【具体例】 1人あたり月500円と費用対効果が高い
- 【理由①】 営業効率が上がる
このように、ピラミッド型で情報を整理していくと、読み手はまず「何を伝えたいのか」がすぐに理解でき、続く根拠で納得しやすくなります。特に、忙しい上司やクライアントに対しては、最初に結論が見える構成が好まれることが多いでしょう。
まずは「何を一番伝えたいか(結論)」を先に決めて、そこから理由と具体例を考えて繋がりを整理していく。これだけでも、資料全体の構造が整い、「話がわかりやすい人」という印象にもつながります。
ポイント⑤:シンプルで見やすいデザインにする
資料のデザインというと、「オシャレに見せよう」「目立たせよう」と考えてしまいがちです。ですが、本当に大切なのは、「相手がストレスなく内容を理解できること」です。
誰でもできる「見やすいデザイン」の基本ルールは以下の通りです。
- フォントやサイズを統一する
- 色は「ベース色+強調色」の2色が基本
- 1スライドに1テーマ、余白をしっかり取る
- 図やアイコンを使い、文章を減らす
ここで注意してほしいのが、デザインは「整えることが目的」ということです。派手にしたり、やたらと装飾をつけたりする必要は全くありません。大切なのは、読み手が迷わずスムーズに内容を受け取れること。資料の中身が伝わるように、本当に伝えるべきポイントのみに絞ったシンプルなデザインにすることが見やすい資料への近道になります。

終わりに:「伝える資料」は“つくる前”で決まる
本記事では、伝わる資料づくりに必要な5つのポイントをご紹介してきました。
資料作成が難しいと感じる理由は、センスやデザインの問題ではなく、「誰に、何を、どう伝えるか」という設計が抜け落ちていることが多いからです。最も大切なのは、「目的から逆算して資料を設計すること」です。読み手は誰か、何を感じてどう動いてほしいのか。このゴールを最初に定めておくことで、情報の整理や見せ方に一貫性が生まれ、読み手の納得感も高まります。
資料作成は「相手に伝えるための道具」そのものです。小手先のテクニックではなく、「相手視点で考える力」を意識し、今回のポイントを実践できるようになれば、誰でも「伝わる資料」を作れるようになります。
次回の記事は「伝わる資料作成の基本~実践編~」です。学んだポイントを踏まえ、実際の資料作成のステップに基づいて解説していきます。お楽しみに!