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「伝わる話し方」入門 ~「何が言いたいか分からない」を脱する3ステップ~

「伝わる話し方」入門 ~「何が言いたいか分からない」を脱する3ステップ~

上司や同僚から『結局何が言いたいの?』と言われがちな社会人3〜5年目に向けて、“伝える力”を高めるためのシンプルな3ステップと習慣化メソッドを紹介します。

思考法著者: 人事部 A.M

伝わる話し方:社会人3〜5年目のコミュニケーション術

「結局何が言いたいの?」社会人3〜5年目になると、自分の意見を明確に伝え、周囲を巻き込む力が求められますが、「伝わらない」と感じることは少なくありません。これは、能力不足ではなく、多くの場合、「伝える技術の基本ルール」と「聞き手への配慮」が欠けていることが原因です。

この記事では、そんな「伝わらない」という悩みを抱える社会人3〜5年目のあなたに向けて、 論理・心理・実践 の3方向から“伝わる話し方”を鍛え上げるための、 シンプルかつ効果的なメソッド をお伝えします。明日からすぐに実践できる具体的なステップと、それを習慣化するためのコツを深掘りしていきます。

この記事はこんな人におすすめ

  • 上司から「結局何が言いたいの?」と指摘されがちな人
  • 報告・連絡・相談がうまくできず、自信を失っている人
  • 後輩指導や説明の場面で「話が伝わらない」と感じている人
  • 論理的な思考力を高め、ビジネスコミュニケーションの質を向上させたい人
  • 限られた時間の中で、自分の意見を的確に伝えたいと願う人

1. 伝える技術の基本は「順序」:PREP法


話が伝わるか否かは 「順序」 に大きく左右されます。最も効果的な順序が PREP(プレップ)法 です。「 Point(結論)→ Reason(理由)→ Example(具体例)→ Point(再結論)」の順で話を組み立てます。

  • P: Point(結論) :最も伝えたいこと、話のゴールを最初に明確にします。
    • 例:「来週までに企画書を提出します。」
  • R: Reason(理由) :なぜその結論に至ったのか、根拠や背景を説明します。
    • 例:「期日厳守のタスクのため、先行着手が必要です。」
  • E: Example(具体例・事例・データ) :理由を裏付ける具体的な事実を示し、信憑性を高めます。
    • 例:「過去の類似案件では、提出直前の仕様変更で手戻りが発生した経験があります。」
  • P: Point(再結論) :最初に述べた結論を繰り返し、次の行動を促します。
    • 例:「つきましては、来週の月曜日までに企画書を完成させ、ご確認いただきたく存じます。」

PREP法は、 「結論ファースト」 を徹底し、聞き手が情報を整理しやすくする、効率的な話法です。

PREP話法を使うためのコツと練習法

  1. 目的を明確にする: 話す前に「何を伝え、どうしてほしいか」を言語化します。
  2. 型を整理する: 最初は「P」「R」「E」「P」とメモに書き出し、キーワードを埋める練習をします。
  3. 音読で慣れる: 日常の簡単な報告で、声に出してPREPを意識して話す練習をします。

2. なぜ「伝わらない」のか?原因を知れば改善できる


「伝わらない」のは、話し手と聞き手の間で起こる “情報処理のズレ” が原因です。

聞き手は“認知負荷”が高い状態で聞いている

話し手は全体像を把握していますが、聞き手は情報をゼロから受け取ります。順序立てられずに情報を与えると、聞き手の脳は 過剰な「認知負荷」 に陥り、混乱します。「伝わらないのは相手の理解力が低いからだ」と考えるのは間違いで、聞き手の負荷を減らすことが “伝える側”の責任 です。

OK例:聞き手の認知負荷を軽減した説明(PREP適用)結論から申し上げますと、A社との提携案は一旦白紙になりました。 (P) 理由は、A社が急遽方針を変更し、コストが合わなくなったためです。 (R) 具体的には、先方の担当者から『初期投資額を〇〇%削減したい』との連絡が入りました。 (E) つきましては、代替案としてC案の検討を急ぎますが、弊社リソースを考慮すると来月末の完成は困難な見込みです。改めて今後の進め方についてご相談させてください。 (P)」 (聞き手は「提携白紙」という結論から入り、その後の話をスムーズに理解できるため、安心して聞くことができます。)

PREPは“話の地図”になる

PREP法を使う最大のメリットは、話の構造そのものが聞き手にとって 「分かりやすい地図」 になることです。聞き手は話の順序を予測できるため、安心してあなたの話を追うことができ、内容の理解に集中できます。結果として、コミュニケーションの質が飛躍的に向上し、 無駄な確認作業や認識齟齬による手戻りを大幅に削減 できます。

3. 話し方は“習慣”で変えられる


PREP法は、頭で理解するだけでなく、 「無意識に出てくる」状態 、つまり 「習慣化」 することが重要です。これは筋肉のトレーニングと同じです。地道な反復によって、脳と口がPREPの型を覚え、自然と使いこなせるようになります。

習慣化のための実践ステップ:今日からできるトレーニング

日常業務の中で、意識的にPREPを適用する「反復トレーニング」を取り入れることが、最も有効な手段です。

  1. 報連相はPREPを意識してフォーマット化する(報告書やチャット)
    • 件名や冒頭で必ず 「目的(結論)」 を簡潔に書く習慣をつけ、本文ではPREPの順序で情報を整理します。
    • 例(チャット): 「[〇〇部長] 〇〇プロジェクト進捗報告です。 P: 〇〇について、本日〇〇まで完了しました。 R: 予定より△△なのは、〜〜のためです。 E: 具体的には、〜〜という問題が発生し、対応に〜〜時間を要しました。 P: つきましては、明日の午前中には最終チェックを終え、〇〇時には共有できる見込みです。ご確認をお願いいたします。
  2. 会議発言の際は事前に1行メモ(結論と目的)を準備する
    • 発言の前に 「この発言の結論は何か?」「相手に何を理解してもらいたいか?」 を、手元のメモに1行だけ書き出す習慣をつけましょう。たった1行のメモでも、話の軸が明確になり、自信を持って発言できるようになります。
  3. 1on1や後輩指導では「まず結論」→「理由」→「例」で意識的に練習する
    • 比較的リラックスできる1on1や後輩への指導は、PREPの練習に最適な場です。
    • 例:「〇〇くん、結論から言うと、この資料の△△を修正してほしい。(P)なぜなら、顧客が〜〜という点を懸念する可能性があるからだ。(R)具体的には、前回のA社でのプレゼンで、まさにこの点が課題になったんだ。(E)だから、〜〜のように変更して、もう一度見せてくれるかな。(P)」

Slackやメール、そして口頭でのあらゆるコミュニケーションにおいて、PREPを意識することは、情報の正確な伝達だけでなく、受け取る側の 「時短の価値」 に直結します。

PREPトレーニングの始め方として 「毎日1つPREPで書く日記」 をおすすめします。日々の出来事を論理的に整理する習慣をつけることで、思考を整理し、論理的なアウトプットを無意識にできるようになります。

実感:筆者が“伝わらない人”だった頃の話


私自身も、かつては 「話が長い」「要点が見えない」「結局何が言いたいの?」 と言われるタイプの人間でした。入社4年目の全社規模の新規プロジェクト進捗報告で、上司から「今の説明、結局なにが言いたいのか分からなかったよ。君が一番伝えたいことは何だったんだ?」と指摘され、自信を打ち砕かれました。

この経験から、自分の話し方が “相手目線”ではない ことに気づき、 「PREP法」 を実践し始めました。最初は戸惑いましたが、日々の報連相やチャット、会議での発言で意識的に習慣化していきました。特に効果的だったのは、話す前に メモにPREPのP,R,E,Pを書き、頭の中で組み立ててから話す ことを徹底したことです。

実践からわずか1ヶ月後、別のプロジェクトの進捗報告をした際、上司から「〇〇くん、最近の報告、すごく分かりやすくなったな。要点がすぐに頭に入ってくる。」と言われ、自分の話し方が “伝わる型”に確かに変わった のを実感しました。

伝える力は、生まれ持った才能ではありません。地道なトレーニングによって、誰もが確実に伸ばせる “ビジネス筋力” です。一度身につければ、あなたのキャリアを力強く後押ししてくれるでしょう。

ケーススタディ:PREPが効く場面と注意点


PREP法は非常に汎用性が高く、様々なビジネスシーンで効果を発揮します。しかし、万能薬ではありません。相手や状況、目的によっては、柔軟な応用や他の要素との組み合わせが必要になる場合もあります。

PREPが特に効果的なシーン

  1. 上司への簡潔な報告・相談

    • 理由: 多忙な上司に対し、限られた時間で「何が起きていて、どうしてほしいのか」を瞬時に伝える必要があるため、結論ファーストのPREPが最適です。
    • 具体的な例: 「部長、来週の〇〇会議の資料作成ですが、 一部リスケのご相談 です。(P)現時点でA社のデータが未着のため、 完成が遅れる見込み です。(R)具体的には、当初20日着の予定が、システム障害で25日になると先方から連絡がありました。(E)つきましては、 会議資料の提出を26日に変更させていただけますでしょうか。 ご確認と承認をお願いいたします。(P)」
  2. 会議での提案・意見表明

    • 理由: 多くの人が参加する会議では、議論が錯綜しがちです。PREPを用いることで、自分の意見が明確になり、説得力と論理性を補完し、議論をスムーズに進めることができます。
    • 具体的な例: 「本件は B案で進めるべき と考えます。(P)なぜなら、当社の 長期的なブランド戦略と最も合致 し、将来的な収益拡大に貢献すると確信しているからです。(R)過去の類似ケースではA案で失敗した前例があり、市場調査データもそれを裏付けています。(E)よって、初期コストはかかりますが、B案に投資することで将来的により大きなリターンが見込めます。 ぜひB案の採用をご検討ください。 (P)」
  3. チャット・Slackでの業務連絡

    • 理由: テキストベースのコミュニケーションは、情報が流れてしまいやすく、後から見返したときに要点が分かりづらくなることがあります。PREPを使うことで、冒頭で全体像を提示し、構造化されたメッセージが、忙しい相手にも要点を素早く伝えます。
    • 具体的な例:
      【進捗共有】〇〇案件、最終テスト**完了しました。**(P)
      昨日修正したバグが、全て解消されていることを確認しました。(R)
      具体的には、〇〇環境で〇〇の動作を複数回テストし、エラーが出ないことを確認済みです。(添付画像参照)(E)
      つきましては、これにて〇〇案件のテストフェーズは完了となります。**次フェーズへの移行をお願いいたします。**(P)