ホーム>記事一覧>ロジカルシンキング基礎~ピラミッド構造で論理的に伝える~
ピラミッド構造で論理的に伝える ロジカルシンキング基礎
ピラミッド構造で論理的に伝える ロジカルシンキング基礎

ロジカルシンキング基礎~ピラミッド構造で論理的に伝える~

思考法著者: 人事部 R.K

論理的に伝える技術 ~ピラミッド構造~


はじめに

「伝えたかったことがうまく伝わらない…」 「提案について上司に納得してもらえなくて…」 「話しているうちに自分でも何を言っているのかわからなくなる…」

そんな悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか?社会人になってから、「話すこと」に関する壁にぶつかる人は少なくありません。せっかくのアイディアや想いも、相手に伝わらなければ意味がない――これは多くの人が直面する課題です。そこで今回ご紹介するのが、「ピラミッド構造」という思考整理のフレームワークです。

話したいことを構造的に整理し、論理的に伝える力を高めるこのツールを使えば、自分の主張とそれを支える根拠が一目でわかるようになります。視覚的にも論理的にもスッキリ整理されるため、相手にも伝わりやすくなります。

まずは、自分の主張と根拠の関係を明確にすることから始めましょう。 ピラミッド構造を使って、伝わる話し方への第一歩を踏み出してみませんか?

この記事はこんな人におすすめ

  • 自分の思考を論理的に整理する方法を知りたい方
  • 説得力のある主張や結論の組み立て方を知りたい方
  • 相手に伝わる話し方ができるようになりたい方

目次

  • はじめに
  • 第1章:ピラミッド構造とは
  • 第2章:いざ実践!ピラミッド構造作成のステップ
    • 2-1. イシューを特定する
    • 2-2. 論理の枠組みを考える
    • 2-3. 主張が適切な根拠で支えられているかチェックする
  • 第3章:論理展開 ~相手に分かりやすく伝える~
    • 3-1. 演繹法を活用した話し方
    • 3-2. 帰納法を活用した話し方
  • 第4章:ビジネスシーンにふさわしい論理展開とは?
  • 第5章:まとめ

ロジカルシンキング基礎~ピラミッド構造で論理的に伝える~①

第1章:ピラミッド構造とは

まずは説得力のある主張を導き出すために必要なフレームワーク、ピラミッド構造について解説します。ピラミッド構造とは、一番上に主張や結論、その下にそれを支える根拠(キーメッセージ)事実を段階的に配置していく論理的な構成法です。主張を視覚的に整理することで自分の思考の妥当性や主張の完成度をチェックすることができます。

この構造では上から「主張→根拠→事実」という三層が積み上がる形になるため、視覚的にピラミッド型(三角形)をなしており、「ピラミッド構造」と呼ばれています。そんなピラミッド構造を活用するメリットは主に2つあります。

ピラミッド構造を活用するメリット2点

  1. 「主張が論理的に構成されているか」、「根拠に妥当性があるか」を事前にチェックできる 会議やプレゼンの前にピラミッド構造で整理することで、論理の整合性を高め、説得力ある説明が可能になります。
  2. 聞き手にも理解されやすくなる 主張と根拠を段階的に説明することで、聞き手にも理解されやすくなります。

つまり話し手と聞き手、両者にとって円滑な意思疎通を助けるフレームワーク、それがピラミッド構造なんです!


ロジカルシンキング基礎~ピラミッド構造で論理的に伝える~②

第2章:いざ実践!ピラミッド構造作成のステップ

では実際にピラミッド構造を作成するにあたっての手順をご紹介します。大きく3つのステップに分かれます。

  1. イシューを特定する
  2. 論理の枠組みを考える
  3. 主張が適切な根拠で支えられているかチェックする

それぞれ順を追って解説します。

2-1. イシューを特定する

ピラミッド構造作成の第一歩はイシュー(今ここで答えを出すべき問い)を明確にすることです。例えば会議の議題や話し合いを通して決めなければならない重要事項がイシューにあたります。したがってイシューに対する答えが最終的に主張や結論になります。

イシューを特定する際のポイントは以下の3つです。

  1. 問いの形にする イシューは必ず問いの形にしましょう。例えばイシューが「中途採用について」という表現では曖昧です。それが「採用手段」なのか「採用方針」なのかが不明確なため、会議や議論の焦点がぼやけ、方向性を見失う可能性があります。「中途採用の方針を変更するべきか?」のような問いにすることとで、検討すべき内容が明確になります。
  2. 具体的に考える 具体的な問いを設定すれば、具体的な答えを導き出すことができます。抽象的なイシューでは、議論が広がりすぎて焦点を見失うリスクがあります。
  3. イシューを押さえ続ける 会議や議論が進む中でも、最初に定めたイシューを一貫して意識し続けることが大切です。話が脱線すると、時間と労力が無駄になります。目的を見失わずに、相手のニーズにしっかり答えるためにも、イシューを軸として議論を進めましょう。

2-2. 論理の枠組みを考える

次に、イシューに対してどのような観点から考えるべきか、「論点のセット=枠組み」を整理します。イシューが明確でも思い付きで意見を出すと論理性に欠けます。主張に説得力を持たせるためには、考慮すべき論点を洗い出し、それぞれに対する答えを根拠として配置する必要があります。

例えば「あるメーカー企業の商品Aの売上を来月10%増やすには?」というイシューの場合、論点として「品質」「コスト」「納期」(QCD)が考えられます。それぞれの論点に対し、「前期よりも品質をどう上げる?」「発生するコストをどう抑える?」「納期をどう短縮させる?」といった問いを設定することで、それぞれの論点に合わせた具体的な施策を検討できます。枠組みを設定することでイシューという大きな問いに対してより具体的に考えることができ、納得感のある主張や結論を導き出すことができるのです。

枠組みを作る際のポイント

論理的な枠組みを作成する際に意識したい3つのポイントをご紹介します。

  1. MECEを意識する まず押さえておきたいのがMECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)という考え方です。これは「モレなく、ダブりなく」論点を整理するための基本的な原則です。たとえば「職場の課題を整理する」というテーマで「人間関係」「業務プロセス」「制度・ルール」と分けた場合、それぞれが重複せず、しかも他に重要な観点が漏れていなければ、MECEに整理できている状態です。MECEを意識することで、論理に穴が空いたり、似たような内容を何度も説明したりすることを防ぎ、説得力のある話の組み立てが可能になります。

  2. 既存のフレームワークを活用する すでに多くのビジネスの現場で使われているフレームワークを活用することで、論点を効率的かつ網羅的に整理できます。代表的なフレームワークには以下のようなものがあります。

    • QCD(Quality, Cost, Delivery):製造や業務改善の場面で、品質、コスト、納期という3つの軸から課題を洗い出すのに適しています。
    • 4P(Product, Price, Place, Promotion):マーケティング戦略を整理する際に役立つ定番フレームです。商品、価格、流通、販促の4つに分けて施策を考えます。
    • 3C(Customer, Competitor, Company):市場分析をする際に、顧客、競合、自社の視点からバランスよく整理するための枠組みです。

    このような既存の枠組みを活用することで、論点を体系的に洗い出すことができます。

  3. 変数分解を用いる イシューを因数分解する方法も有効です。例えばあるアイスクリーム屋の売上を上げるための施策を考える場合、売上は「来客数 × 客単価」と分解できます。それぞれの要素に対して「来客を増やすには?」と「客単価を上げるには?」の2つの観点から施策を考えることができ、議論が抽象的になりすぎず現実的な視点で物事を捉えることが可能になります。

枠組みを設定する際に留意すべき3点

  1. 問いの形にする イシューと同様に、各論点も問いの形にすることで、検討すべき方向が明確になります。イシューが大きな問いの形をしているならば、枠組みはより具体的で小さな問いのイメージです。
  2. 論点のレベルを揃える 複数の論点を並べる場合、それぞれが同じレベル感であることが重要です。たとえば、「販売チャネル」「価格」「東京支店の営業方針」といった論点が並んでいた場合、最後の項目だけが特定の支店に焦点を当てており、他の項目に比べて粒度が異なります。レベル感が揃っていないと、論理の構造が歪み、説得力が低下してしまいます。
  3. イシューにふさわしい枠組みを選ぶ 設定した枠組みがイシューに対して本当に有効であるかも確認が必要です。汎用的なフレームワークをそのまま使うのではなく、イシューの性質に合ったものを柔軟に選ぶことが大切です。例えば組織改革に関するイシューに対して、「品質・コスト・納期」といった製造業向けの枠組みをそのまま当てはめても、的外れな議論になってしまいます。

既存のフレームワークが使えない場合は、自分で論点を設定する必要があります。その際はまずイシューに対する具体的な情報やアイディアを発散し、それらをグループ化して整理していくと、おのずと適切な論点が見えてきます。そしてその論点が「全体を網羅しているか(モレがないか)」「重複していないか(ダブりがないか)」を確認することが重要です。これが先述したMECEという考え方です。MECEに整理された論点は、論理展開の骨格として強固な支えとなるのです。

2-3. 主張が適切な根拠で支えられているかチェックする

ピラミッド構造の最終ステップは、主張(=イシューに対する答え)が、その下にある根拠によってしっかりと支えられているかどうかを確認することです。ここで重要になるのは、主張と根拠の間に明確な因果関係があるか、つまり「なぜその主張に至るのか」が論理的に説明できるかどうかです。主張と根拠がかみ合っていないと、どれだけ見た目が整っていても説得力のない構造になってしまいます。

この因果関係を確認する方法として、「なぜ?(Why?)」と「だから何?(So what?)」の2つの問いを活用するのが効果的です。上から下に向けて「なぜこの主張が成り立つのか?」と問い、下から上には「この根拠から導き出される主張は何か?」と問いかけてみるのです。この双方向の問いにしっかりと答えられる構造になっていれば、論理のつながりは十分といえるでしょう。

例えば、「社内コミュニケーションを円滑にするためには、週1回の全体ミーティングを実施すべきだ」という主張を立てたとします。その下には、「情報の共有不足が業務の非効率を生んでいる」「全体ミーティングによって部門間の連携が促進される」というような根拠が来るべきです。このとき、根拠と主張の間に「なぜ?(なぜミーティングが必要なのか)」「だから何?(だから全体ミーティングを導入するのか)」という論理の流れがあるかを確認します。

さらに次の2点についても意識的にチェックすることが重要です。

主張と根拠の繋がりを確認する際のポイント

  1. 根拠の裏付けは十分か? 根拠となる内容は、主張を支えるために必要な「証拠」です。これがあいまいだったり、印象や感想レベルの話だったりすると、説得力は一気に落ちてしまいます。具体的なデータ、事例、実績、専門的な知見などを使い、根拠に信頼性と客観性を持たせましょう。
  2. 相手の関心にあった論点になっているか? 論理的に正しい主張でも、聞き手や読み手の関心とかけ離れていれば、心に届きません。根拠として選んだ情報が相手の立場や課題意識にマッチしているかどうかを確認し、必要であれば角度や表現を調整することも大切です。伝える相手を想定し、その人にとっての納得感や関心軸を意識することで、主張の説得力は格段に高まります。

(川上)ロジカルシンキング (2)

第3章:論理展開 ~相手に分かりやすく伝える~

最後に論理展開について触れておきましょう。どれだけ精度の高いピラミッド構造を築いてもそれを相手にうまく伝えられなければ意味がありません。特に重要な会議での発表やプレゼン、顧客への営業、クライアントへの提案といった場面では相手を正しく説得させるような論理的な話し方をする必要があります。

論理展開には大きく分けて2つの基本パターンがあります。演繹法帰納法です。

3-1. 演繹法を活用した話し方

演繹法は2つの情報を関連付けてそこから結論を必然的に導き出す方法です。観察事項を一般論と照らし合わせ、結論を導きだします。例えば「リーダーにはコミュニケーション力が不可欠」という一般論があるとします。そして「田中さんはコミュニケーション力が高い」という具体的な観察事項があるなら、「田中さんはリーダーにふさわしい」という結論が導かれます。演繹法的な論理展開は物事を起承転結の順で丁寧に展開していくイメージに近く、聞き手がその過程を追いやすいという特徴があります。

3-2. 帰納法を活用した話し方

帰納法は観察されるいくつかの事象の共通点に着目し、ルールや結論を導き出す方法です。例えば

  • 田中さんは学生の時に野球部のキャプテンを務めていた
  • 田中さんはよく社内で飲み会を企画している
  • 田中さんは他部署のメンバーに協力を仰いで新プロジェクトを立ち上げた

という3つの観察事項があったとします。

これらすべてに共通するのは田中さんに「人をまとめ、率いる力がある」という点です。そこから「田中さんにはリーダーシップがある」という結論を導き出すことができます。帰納法的な論理展開では、まず結論を提示し、そのあとに根拠となる具体例を示すことで話を展開します。いわゆる「結論ファースト」のスタイルです。


ロジカルシンキング基礎~ピラミッド構造で論理的に伝える~④

第4章:ビジネスシーンにふさわしい論理展開とは?

では実際にビジネスシーンにおいて演繹法的な話し方と帰納法的な話し方どちらの論理展開が望ましいのでしょうか?

多くのビジネスシーンの場合、「帰納法的な話し方=結論ファースト」が有効であるとされています。理由はシンプルに、結論を先に話すことで相手が話の全体像をつかみやすくなり、必要な情報だけを効率的に受け取ることができるからです。特に時間の限られた会議やプレゼンでは、まず結論を伝えることが重要な戦略となります。

しかし帰納法的な話し方にも注意が必要です。例えばクライアントの上層部や普段あまり接点のない社内の重役に対して提案をする場面では、前提が共有されていない可能性があります。その場合、いきなり結論を述べても、相手が背景を理解していないために納得感を得られないことがあります。一方直属の上司や日常的に情報を共有している相手であれば、すでに共通の前提があるため、結論から話した方が話のテンポもよく、効率的です。したがって、誰に向かって話すのかという「相手軸」を意識しながら、論理展開のスタイルを柔軟に選ぶことが重要です。


ロジカルシンキング基礎~ピラミッド構造で論理的に伝える~⑤

第5章:まとめ

相手に伝えられるように論理的に話す力は、一朝一夕で身につくものではありませんが、「ピラミッド構造」というフレームワークを使えば、誰でも確実に一歩を踏み出すことができます。イシューを明確にし、論点を整理し、根拠をもって主張を支える。そのプロセスを丁寧に積み上げることで、伝えたいことが伝わる、説得力ある話し方が実現できます。ぜひ日々の仕事やプレゼン、提案の場面で実践し、自分の考えを“伝わる言葉”に変えていきましょう!