【導入】「なぜか伝わらない…」と感じたあなたへ
- 「自分の言いたいことが、どうもチームメンバーにうまく伝わらない」
- 「一生懸命説明したのに、上司から『結局、何が言いたいの?』と聞き返されてしまう」
- 「話が長くなるばかりで、いつも要点がぼやけている気がする」
日々のビジネスシーンで、そんなモヤモヤや自己嫌悪に陥る瞬間はありませんか? もし一つでも心当たりがあるなら、それは決してあなたの能力や性格の問題ではありません。その原因は、“話す内容”ではなく、**“話の順番と構造”**にある可能性が高いのです。
特に、社会人1〜3年目の若手ビジネスパーソンにとって、「いかに自分の意見や情報を正確に、そしてスムーズに伝えるか」は、仕事の成果に直結するだけでなく、上司や先輩、顧客からの信頼獲得にも大きく影響します。論理的な話し方は、生まれつきの才能ではなく、誰でも確実に身につけられる**「技術」**です。
この記事は、**「論理的に話すのが苦手」「考えが整理できない」「いつも話が長くなる」**と感じる社会人1〜3年目の方に向けて、“伝わる話し方”の基本構造を図と実践的なステップで学べる入門ガイドです。明日からあなたのコミュニケーションを劇的に変えるヒントがここにあります。
このガイドを読み終える頃には、あなたは自信を持って自分の考えを伝えられるようになり、コミュニケーションがもっと楽しく、効率的になるはずです。さあ、一緒に「伝わる話し方」の秘訣を探り、あなたのビジネススキルを一段階引き上げましょう。
1. 伝わらない理由は「順序と構造」にある:あなたの論理を“共通言語”に変える
「言いたいことが伝わらない」のは、“あなたの中だけの論理”になっているから
あなたは一生懸命、頭の中で筋道立てて話しているつもりかもしれません。しかし、聞き手からは「話が飛んでいるように感じる」「結局、何が言いたいのか結論がわからない」「話があちこちに飛び火する」といった印象を持たれてしまう。なぜこのようなギャップが生まれるのでしょうか?
それは、あなたの頭の中で情報が整理され、結論に至るまでのプロセスが、そのまま聞き手の頭の中で“同時再生”されるわけではないからです。聞き手はあなたの知識や背景を共有しているわけではありません。彼らは、あなたが話す言葉を順に追いかけ、その都度意味を理解し、頭の中で整理していく必要があります。
聞き手は、あなたの頭の中にある思考回路や情報を**“同時再生”していません**。だからこそ、相手が理解しやすいように、話す順番や情報の提示の仕方を“設計”する必要があるのです。この設計こそが「論理的思考」であり「論理的会話」の入り口です。
例えば、あなたがカフェで友人と「昨日見た映画」について話すときと、仕事で上司に「新規プロジェクトの提案」をするときでは、話す順序や詳細の度合いが全く異なるはずです。これは無意識のうちに、相手の状況や求めている情報に合わせて話の「型」を変えているからです。しかし、ビジネスシーンでは、この「型」の意識が薄れると、「話が伝わらない」という問題に直面してしまうのです。
話し方の型(構造)が重要になる理由:理解を助ける“枠組み”
では、具体的にどのような「型」が、聞き手の理解を助けるのでしょうか? それは、話に**明確な“枠組み”や“骨組み”**を与えることです。

人間は、目の前の情報に意味づけをすることで、初めてそれを理解し、記憶することができます。例えば、パズルのピースをバラバラに渡されても、全体像がわからなければどこに何を置けばいいか戸惑うでしょう。しかし、まず完成図(結論)を見せられてからピース(理由や具体例)を渡されれば、それぞれのピースが持つ意味が明確になり、スムーズに組み立てられるはずですす。
論理的な話し方もこれと同じです。「結論は何か?」「なぜそう言えるのか?」「具体的にはどういうことか?」という順番で情報が提供されると、聞き手は各情報が持つ役割を認識しやすくなり、頭の中で情報を効率的に整理できます。
つまり、明確な型に沿って話すことは、聞き手にとっての「理解のレール」を敷く行為なのです。このレールがあることで、聞き手は脱線することなく話の全体像を把握し、スムーズに納得感を深め、最終的にあなたのメッセージを記憶に留めることができるようになります。
2. 初心者でも劇的に変わる!「話の型」3選と使い分けのコツ
論理的な話し方の「型」はいくつかありますが、ここでは特にビジネスシーンで汎用性が高く、初心者でも実践しやすい3つの型をご紹介します。まずはこの型を意識するだけで、あなたの話は格段に「伝わる」ようになります。
① PREP法(Point→Reason→Example→Point):最もシンプルで応用範囲が広い基本形
PREP法は、ビジネスコミュニケーションの最も基本的な型であり、最も汎用性が高いと言えます。どんな場面でも応用が効くため、まず最初に習得すべき型です。
- P (Point:結論):まず、最も伝えたいこと、話の「結論」から入ります。これにより、聞き手は話の全体像を瞬時に把握できます。
- 例:「私はこのA案に賛成です。」
- R (Reason:理由):次に、その結論に至った「理由」や「根拠」を述べます。結論の裏付けを示すことで、聞き手は納得感を持ち始めます。
- 例:「なぜなら、A案は市場のニーズに最も合致しており、競合優位性が高いと判断できるからです。」
- E (Example:具体例・事例):続いて、理由を裏付ける「具体的な事例」「データ」「経験談」などを提示します。これにより、話の説得力が増し、聞き手は具体的なイメージを持つことができます。
- 例:「実際、先日実施したユーザーアンケートでは、A案で提案する機能に対するニーズが8割を超えていました。また、類似するB社の事例では、同様のアプローチで導入後3ヶ月で顧客獲得数が2倍になった実績もあります。」
- P (Point:再結論):最後に、もう一度結論を繰り返します。これにより、メッセージが強調され、話全体が引き締まり、聞き手の記憶に残りやすくなります。
- 例:「以上の理由から、私はこのA案を強く推奨します。」
【こんな時に効果的】 日々の報連相、短い会議での発言、メールでの提案、上司への相談など、ほとんど全てのビジネスコミュニケーションで活用できます。特に、短時間で要点を伝えたい場合に絶大な効果を発揮します。
② SDS法(Summary→Detail→Summary):説明会やプレゼンで全体像を掴ませる
SDS法は、話の要点を最初に提示し、詳細を述べた後、最後に再度要点を繰り返す構造です。PREP法が「主張と根拠」に重きを置くのに対し、SDS法は「概要と詳細」に焦点を当てます。
- S (Summary:概要・要点):まず、話全体の「要点」や「概要」を簡潔に伝えます。
- 例:「本日は、新商品開発プロジェクトの進捗について、現在の状況と今後の展望を3つのフェーズに分けてご報告します。」
- D (Detail:詳細):次に、その要点に関する具体的な内容や詳細情報を説明します。
- 例:「フェーズ1では市場調査を完了し、ユーザーニーズを特定しました。フェーズ2ではデザインコンセプトを決定し、プロトタイプを開発中です。フェーズ3では来月に最終テストを実施し、〇月〇日のリリースを目指します。」
- S (Summary:まとめ・再要点):最後に、もう一度話全体の要点をまとめ、強調します。
- 例:「以上のように、新商品開発プロジェクトは順調に進行しており、予定通り〇月〇日のリリースに向けて最終段階に入っています。」
【こんな時に効果的】 全体説明会、プレゼンテーション、進捗報告、サービス説明など、比較的まとまった情報を体系的に伝えたい場合に適しています。聞き手が話の全体像を見失わないようにガイドする役割を果たします。
③ ホールパート法(Whole→Part→Whole):難解な情報を分かりやすく分解する
ホールパート法は、「全体像→部分的な詳細→再び全体像」という流れで情報を伝える型です。特に、聞き手にとって馴染みのない概念や、複雑なシステム、手順などを説明する際に非常に有効です。
- W (Whole:全体像):最初に、説明する内容の「全体像」や「概要」を提示します。
- 例:「これからご紹介する新しい勤怠管理システムは、皆さんの日々の業務を効率化し、残業時間の可視化を目的としています。」
- P (Part:部分的な詳細):次に、その全体を構成する各要素(部分)について、それぞれ詳しく説明します。
- 例:「システムは主に『出退勤打刻機能』『残業時間申請機能』『上長承認機能』の3つのモジュールで構成されています。まず打刻機能では、〇〇の方法で打刻を行います。次に残業時間申請機能では、〇〇の手順で申請します。最後に上長承認機能では…」
- W (Whole:全体像の再確認):最後に、再び全体像をまとめ、各部分がどのように全体と関連しているかを再確認します。
- 例:「このように、新しい勤怠管理システムは各モジュールが連携することで、皆さんの勤怠管理をより正確かつスムーズに行い、会社全体の働き方改革を推進します。」
【こんな時に効果的】 新システム導入の説明、複雑な業務プロセスの解説、組織図の紹介、専門的な知識の共有など、情報量が多く、聞き手が理解しづらい可能性のあるテーマを扱う場合に力を発揮します。
まずはPREP法から練習するのがおすすめです。この型を習得するだけで、日々のコミュニケーションが劇的に変化するのを実感できるでしょう。型があるだけで、話す前の思考の整理が圧倒的に早くなり、自信を持って話せるようになります。
3. 話す前の「組み立てメモ術」:思考整理の具体ステップ
実際に「型」を使って話すためには、話す前に頭の中を整理するステップが不可欠です。ここでは、PREP法を例に、効率的な「組み立てメモ術」をご紹介します。これは、あなたの思考を整理し、伝えたいことを明確にするための具体的なワークです。
ステップ1:1行で「何を伝えたいか」を言語化する(P:Point)
まず、今回のコミュニケーションで**最も伝えたいこと、つまり最終的な「結論」や「提案」**を、たった1行で書き出してみましょう。これは、話の「核」となる部分です。
- ポイント: 短く、具体的に、そして疑問形ではない断定形で書くこと。「〜だと思います」ではなく、「〜すべきです」「〜します」と言い切る形が理想です。
- 例:
- NG例: 「今月の売上について、ちょっと気になっていることがあります。」(何が言いたいか不明確)
- OK例: 「〇〇という施策は、来月までに必ず実施すべきです。」(結論が明確)
この1行の結論がブレると、その後の話全体が曖昧になってしまいます。最初に時間をかけてでも、この「核」を明確にしましょう。
ステップ2:その結論に対する「理由・根拠」を3つ出す(R:Reason)
次に、ステップ1で言語化した結論が「なぜそう言えるのか」という理由や根拠を、最低でも3つ具体的に書き出します。ビジネスにおいて、結論だけでは「なぜ?」という疑問が残ります。この「理由」こそが、聞き手の納得感を生み出すカギです。
- ポイント: 「3つの法則(Rule of Three)」を意識しましょう。人間は情報を3つにまとめられると、最も理解しやすく、記憶に残りやすいと言われています。もちろん、状況によっては2つでも4つでも構いませんが、まずは3つを意識すると整理しやすいです。
- 例(結論:「〇〇という施策は来月までに実施すべきだ」の場合):
- 理由①:市場のニーズが急速に高まっており、競合他社に先行するため。
- 理由②:既存顧客の離反を防ぎ、顧客満足度を向上させるため。
- 理由③:関連部署との連携が必要であり、スケジュール調整に時間を要するため。
これらの理由は、客観的な事実やデータに基づいていると、さらに説得力が増します。
ステップ3:各「根拠」に対応する「具体例・データ」を整理する(E:Example)
最後に、ステップ2で出したそれぞれの理由や根拠を裏付けるための具体的な事例、データ、数値、エピソードなどを整理します。抽象的な説明では、聞き手は「本当に?」という疑問を抱きがちです。具体的な情報があることで、話にリアリティと説得力が増します。
- ポイント: 数字や固有名詞、具体的な行動など、イメージしやすい情報を用いること。聞き手の「もし自分だったら?」という視点に訴えかけるような例だと、さらに効果的です。
- 例(理由:「市場のニーズが急速に高まっており、競合他社に先行するため」の場合):
- 具体例:先日実施したユーザーアンケートでは、この施策で提案する機能に対する要望が85%に達していました。また、他社事例として、類似サービスを半年遅れで導入したA社では、先行したB社に市場シェアを大きく奪われたというデータがあります。
これらをメモとして書き出すと、以下のようになります。
1P(結論):〇〇という施策は来月までに実施すべきです。
2R(理由):その理由は3点あります。
3市場ニーズの急速な高まりと競合先行のため
4既存顧客の離反防止と満足度向上のため
5関連部署連携によるスケジュール調整の必要性のため
6E(具体例):
7アンケートで85%が要望。A社の遅延で市場シェア喪失の事例あり。
8(現状の課題データなど)
9(連携が必要な部署と想定される調整期間など)
10P(再結論):よって、早期の〇〇施策実施を強く提案します。
このメモを元に話すことで、あなたは自信を持って、論理的で分かりやすいコミュニケーションができるようになるでしょう。
4. 実践編:話す順序を整える日常トレーニング
「型を覚えただけでは、なかなか実践で使えない…」そう感じるかもしれません。しかし、論理的な話し方は、筋トレと同じで、日々の「小さな実践」の積み重ねが重要です。ここでは、今日からでも始められる具体的な日常トレーニングをご紹介します。
1. 報連相をPREPで“書く”習慣をつける
最も手軽で効果的なトレーニングが、日々の「報告・連絡・相談(報連相)」をPREP法で“書く”ことです。メールやSlack、Teamsでのメッセージは、自分のペースで思考を整理できるため、練習に最適です。
- 実践方法:
- メールの件名や冒頭で**結論(Point)**を明確に記載する。
- 本文では、その結論に至った**理由(Reason)**を簡潔に述べる。
- 必要に応じて、**具体例やデータ(Example)**を添える。
- 最後に、**改めて結論(Point)**や次のアクションを提示する。
- 例(Slackでの報告):
【P】Aプロジェクト週次報告:〇〇機能のリリースを予定通り来週に前倒しできそうです。 【R】理由は2点です。 1.開発チームの〇〇さんが急遽リソースを調整してくれたため。 2.想定していたエラーが事前テストで発見されず、修正工数が減ったため。 【E】現時点のテスト結果は添付資料をご確認ください。最終テストは〇日に行います。 【P】このため、計画より早いリリースが可能と判断しました。ご承認をお願いします。